5. 疫学(中皮腫の原因)

What is Mesothelioma?

(1)中皮腫の原因は石綿(アスベスト)ばく露がほとんどです。

 石綿(アスベスト)曝露が、ほとんどの場合の原因とされている(The great majority of mesotheliomas are due to asbestos exposure) 4)。中皮腫もついては、青石綿(クロシドライト)や茶石綿(アモサイト)が白石綿(クリソタイル)より発癌性が高いと考えられています。ばく露から発病までの期間は、一般的に40年以上とされています。

 中皮腫の原因では、アスベストの職業上のばく露が80%とされています(ヘルシンキ基準1997) (About 80% of mesothelioma patients have had some occupational exposure to asbestos, and therefore a careful occupational and environmental history should be taken.)。もちろん過去の各種論文には、石綿(アスベスト)関連が100%〜50%とありますが、職歴調査が不十分だとかいうものを除いていくと、このくらいと言われています。

 アスベストを取り扱う鉱山・事業所近隣住民(日本では尼崎や奈良県の石綿製造工場が典型ですが、東京大田区、さいたま市等含め多くの地域で事例があります。扱う労働者の家族(労働者の衣服に付着したアスベスト被曝と推測される)にも発症し、このことは1959-60年のJC Wagner論文にも書いてあることです。吹付け石綿のある建築物で生活したり勤務した人に患者が出ており、建物曝露と言われています。

 中皮腫と診断された方の中には、石綿と自分の仕事との接点がないと思ったりする方が案外いますが、実はかなり多様な場所で石綿(アスベスト)が使用されていることを知らない場合が多くあります。タルク等でも石綿(アスベスト)混入があります。

 職業歴や居住歴や建物歴を拾い上げると石綿との関連が明らかとなってくるケースもある。私たちは、「中皮腫で石綿との接点が見つからないと思われている方」に向けたチェック表を出していますのでご参照下さい。

(2)石綿(アスベスト)以外の中皮腫の原因

 他の原因ももちろんあります。放射線同位元素や遺伝などありますが、他の原因とする論文は全世界で集めても20例とか、5例とか少数です。石綿鉱山では一つの鉱山で中皮腫で1000人亡くなっている状態ですから、圧倒的にアスベストの影響が強いのが中皮腫です。、SV40というウィルスが関係しているという実験レベルでの報告もありましたが、人間レベルで証明が出来ず。実験室でのウイルスの混入とか小児ワクチンの混入とか言われます。

 潜伏期間10年以内の10歳以下の中皮腫もあり、遺伝的な中皮腫がごくまれに認められることが報告されています。原因とされているものとして、放射線同元素のトロトラスト、医療用放射線、一種エリオナイト(Erionite)も同様に中皮腫を引き起こすことが確認されています。なお中皮種と喫煙の関連を認めた報告は、ほとんどありません。

(本項目の文章は2018年8月段階の内容です。2018年9月以降の変化は反映していない場合がある点ご了承ください。)