シンポジスト討論

Symposium 2008/08/28

会場から

司会:シンポジストの間でのご質問はよろしいですか。会場から質問を伺いながら進行させていただきます。

会場:関西の安全センターの方、今月の始めの朝日新聞の8月5日号ですかな。クボタをはじめとする各企業の労働組合の動向が出ていました。アスベスト関係の企業の労働組合の動向というのはあの新聞とそんなに違いないと見ています。私もかつて労働組合の中におりましたから、良くわかるのですが、その後の動向、いったい当該労働組合はどういう状況にあるのか、教えていただきたいと思います。それから今日配られました石綿対策全国連絡会議の情報ですが、これは内閣総理大臣に対する連絡会議としての提言というのがありますね。この中で作業環境評価基準というのがあります。この中で4月の1日からやや厳しくなったという文言があります。厳しくなったのは私はいいことだと思います。今から15年ぐらい前に、私はじん肺審議会の委員をやっていました。そのころ、じん肺審議会の中で、私が問題にしたのは、許容濃度と管理濃度はどのように違うのか、議事録を2,3日前に引っ張り出してみてみました。依然として僕ら労働者から見ればわからない状況があるのです。この場で教えていただきたいのは、許容濃度と管理濃度は違うというのが労働省の当時の説明で今もたぶんそうだと思うのですが、そうすると当然管理濃度を厳しくしたわけですから、許容濃度はどういうふうに変えたのか、変えないのか。許容濃度はそのままで、管理濃度の部分だけ変えたのか。そこらへんを教えていただければありがたいと思います。

片岡:労働組合のお話ですが、わかりません。きちんとした情報提供のお申し出とか、協力したいとか、かつてのチッソの労働組合のようにある時点から悪かった、ちゃんと俺たちはやるぞというお話は今のところないです。期待はしています。けれどそれは求めてやるものでもないと思うので、とりあえずこっちはこっちでやっとくしかないかと思っております。

司会:最後の方の質問はやや答えがしにくいようです。

会場:私は金属屋根製造している会社のものですが、要望が2つほどあります。今室内の環境曝露が大きくとりあげられているのと、解体における曝露に関する危険性が取り上げられ、石綿障害予防規則が制定されていますが、実は我々屋根業界からしてみると化粧石綿板等や波型スレートが劣化してアスベストが大気中に飛散するという危険性を以前から指摘しておりました。なかなかそれが周知徹底されていない。クボタさんが発表してからも我々いろいろ2ヶ月近く取引先を回っているのですが、どうも業者の方も知らない。えっ化粧石綿板にアスベスト入っているのという状況です。業者の方が知らないということは、一般の方はなおさらではないかと愕然としまして、ぜひこのような劣化した屋根からはアスベストが飛散するのだという危険性をもっと広く国民に知らせていただきたいという要望がまず1点です。

 2番目石綿障害予防規則7月1日に施行されましたけれども、結果として解体作業だけを重点的にやられていることで、我々屋根業界からすると、化粧石綿板の屋根の改修を見ますと、塗装の塗り替え時、塗装業者さんが塗装の前処理として高圧洗浄を行っているわけですね。そうすると、高圧洗浄で屋根の表面を削り落として、大気中に撒き散らしているわけです。これがまた塗装業界に国から何の通達もされていない。何の規制もない。こういう状況を業者そのものも知らなければ仕事を頼んでいるお客さんも知らない。一般の人も知らない。アスベストをどんどん吸い込んでいるわけです。こういう状況を一刻も早くなくさないことには今の法律だけではだめなので、そこを提言として塗装に関する高圧洗浄そのものを禁止するような提案もぜひやっていっていただければなあと強く感じております。

司会:今の点に関しまして、普通の測定方法では一見大気と比べて変わらないデータが出て、経年劣化しても安全ですとなってしまうのです。そういう報告もあり安全だと。ところがドイツの研究者は、特別な測定装置を作って非常に細かく測り続けるやり方をしています。そしてはじめてアスベストの波型スレートからの飛散を証明しています。通常の測り方をすると安全という結果が出るので、研究機関と十分相談して、特別なやり方をとってやらないといけないということが一つあると思います。高圧洗浄については、保健所がかなり詳しい調査をしていて、確かに大変問題なところだと思います。

会場:測定士の資格をもっていまして、30年前に測定していたこともあるので、問題点をある程度わかっているつもりなのですが。今は石綿を測定するときに確か1:3以上のやつをカウントするということになっていますが本当にそれだけでいいのか。短いのは病理学的に影響しないのかなというのが一つです。もっと短いのが影響するのであれば、以前のブレーキシューから発散していたはずの石綿の粉は、道路にいっぱい面しているところはかなり影響があったと思うのですが、それはぜんぜん気にしなくていいのかどうか。

司会:今言われているのは、アスベストは長さが5ミクロン以上で3:1の太さと長さの比があるもの、以外は問題無いとされているがそれでいいのかというご質問です。はっきりと短いものも明らかに危ないのだというのが定説には至っていないというところがあろうかと思います。

村山:昨年の11月にうちの大学でアスベスト世界会議をやったのですが、そのときに来ていただいたニューヨークのマウントサイナイ医科大学の鈴木先生の発表結果によると、いまおっしゃったように、5ミクロン以上のものをずっと対象にしてきたけれども、それよりも短いものについても影響があるというような結果報告をされていました。ただ、先ほど名取先生がおっしゃったように、リスクの評価においては5ミクロン以上のものが対象になっていますので、そういったデータの結果があるのですが、それによってどのくらいの危険性があるのかというのはまだ出てきていないというのが現状だと思います。

 それから確かに、ブレーキシュー、あるいは自動車整備工場というのは非常に日本にいっぱいあって、現在もあるわけです。今の新車についてはブレーキに使われていないのですが、中古車に関してはまだ使われている可能性があるわけですよね。そういったものを実際に整備する方に影響が無いということは否定できない。さらにその工場周辺に対する影響も否定できないわけです。そういったところももしかしたら今後影響として明らかになるかもしれないところがあると思います。

会場:私は被害者でもなんでもないのですが、この問題を深刻に憂いています。実は理科系の学者の方はいるのですが、法的なことで何も話が出なかったのでお聞きしたい。見ていますと、将来に対する対策の提言という話になっていますが、責任はどうなんだという話をしないと、ここに患者の皆さんや家族が具合悪いという人も来ていると思うのですが、救われないと思います。クボタに関してはお見舞いという話が出ているようですが、お見舞いではなくて償いでなくては話にならないと思うんです。亡くなった方を含めればそういう問題があるべきところで、この運動に私も賛成しますので、告発型の運動ができないかと思っていますので、なんか教えてもらえないかなと思っています。それはクボタの話だけではなくて、水俣問題でわかるように国が責任を認めたのはずっとずっと後になってからですよね。これは新聞にいっぱい出ているから解説はいらないと思うのですが、省庁の縦割りだなんだって問題点を言っても誰も責任をとらない、はっきりしているのは自由民主党がずっとやってきたんじゃないですか。ですから歴代の政府が誰も責任を取らないでこれから良くやります、選挙始まるから徹底的にやりますと言っていますが選挙向けの話ではだめなんでないか。そういう意味で政府が今まできちんと国民の健康と向き合って来なかったという不作為の違法が問われなければいけないと思うので、この会議を起点にそういう運動にもなっていけばいいと思っています。法律の専門家ではないので答えにくいと思うのですが、誰か一言前に前進する話をしていただけるとよろこんで帰れるのですが、よろしくお願いします。

司会:様々なご質問が終わったら、責任の話にも触れようかと思っていたのですが、ご質問が出ましたので行きたいと思います。村山先生もお話になっていたのですけれども環境暴露という一般的な話ではなくて、公害の側面というのが明らかにある。公害の側面と言うことになると、加害企業の責任という問題があるわけですが、村山先生あるいは片岡さんの方からどうでしょうか。

片岡:僕の提案はさっきやったつもりです。クボタのやったことは犯罪です。これはもうはっきりしているわけです。かつて亡くなられた田尻宗昭さんも公害は企業犯罪だということを言っておられましたが、こんなのは典型的なことなんです。ですから見舞い金とか弔意金という問題ではないということはクボタ自身が判っているわけです。ですから早くやれということです。要するにその場には皆さん居なかったので判らないのですが、はじめの3人の患者さんが4月26日にお会いになった時に、要するにもう基本的にクボタが原因としか考えられないわけだから、少なくとも自分の社員くらいのことはすぐやって貰いたいとおっしゃっていますから、はっきりそうです。企業犯罪的な要素というのははっきりおっしゃっていたのですが、今回の調査で僕の中ではもう完全にそうなっています。法律とかなんとかとおっしゃいましたが、法律なんか関係ないですよ。法律なんかあろうがなかろうが、悪いことをやったやつはちゃんと償えというのは当たり前のことなんで、基本的にはそういう問題だと思っているし、患者さんもそう思っています。けれどもこれは中皮腫の患者さん皆そうなんですが、潜伏期間が皆長いですよね。今吸って今病気になって今死んだんだったらすぐ判りますよね。すでにお亡くなりになってから5年とか7年とか10年とかなっている患者さんで、10何年前に生活が完全に破壊されて、子供さんたちとこの10年間ずっと生活してこなかった人の苦しみとか、悔しさというのは他人には判らないですよね。それでそういうものをおして、皆さん相談に来られていて、そういう人が記者会見に出てきた時に国の支援を早く求めたいというその意味はその奥底にはすごい怒りがあるわけですよ。クボタに対して怒っているのは当然のことですよ。だけど、自分たちが今まで堪え忍んできて、やっと社会的に発言できるようになって、皆さんはそれを見ているわけですが、本当に応援してくれるのかどうかわかんないわけです。一生懸命新聞を買って読んでくれるけれども、テレビも一生懸命見ているかもしれないし、ここに参加されてご発言もされるかもしれないけれども、でも、そのことが患者さんたちのどういう力になるのか、彼らがまだ実感できていないです。全然。変な話ですけれども、国の責任者は誰も行っていないです。問題と思った人が次々尼崎市に行って、患者さんの支援活動に立ち上がるということもまだ無いし、尼崎市の方でも市会議員の方や、運動家の方で有志の方がいろいろ動いてくださっていますけれども、そこでもまだ支援運動がはっきりとした形で目に見えてこないですよね。なんかクボタが良いことをしているという中では正直言って本当に次から次と患者さんが出てきて、対応にずっと追われてきて、僕らじゃどうしようもないから、先生方に因果関係の証明を頼んで、とりあえずこれを持っていけと言われて今日持ってきたわけです。持っていけと言われて出したけど、こんなもの僕らの実感と全く一緒で、9.5倍というけれど、条件の取り方をすればもう20倍、30倍の話ですから、こんなもの誰が考えても明らかな話なんで、こういう実感に基づいてなんとかしろということを、1本の電話でもいいからクボタにかけてください。そういう段階なんです。それで、患者さんたちに勇気を与えてやってもらいたいんです。僕の言いたいことは今それだけです。

会場:車の問題です。車のブレーキライニングやクラッチフェーシングだとかそういうところから、移動しながらどんどんあちこちに石綿繊維が飛散しているということになると、肺胞で酸素と炭酸ガスの交換が劣化してうまくいかないという状況になるわけでしょう。ですから中皮腫にならなくても、毎日1時間も2時間もウォーキングを健康のためにやっているつもりが、じつは相当肺の機能が劣化をするということになりますと、因果関係がはっきりしていれば、故意または過失により他人の権利を侵害したるものその損害を賠償する責めに任ずという、民法709条の不法行為なんですよね。クボタクボタといわれますが、そうすると実は移動手段の中で、ブレーキライニングやクラッチフェーシングだとかそこらのやつによる我々全員が被害者なんですよね。自動車メーカー、トヨタなんか知らん顔している。特定作業を担っている人が労災でどうのこうのという問題ではなくて、そういう環境全体の問題というのは、責任の所在がはっきりしているものについては、追求する方法を考えていかないといけないなと思うのですが、いかがでしょうか。

司会:これはシンポジストが答えるより弁護士さんが答えた方がいいと思います。A先生。

A先生:まだ検討中なのですが、現行法でも不法行為ということがありますし、製造物責任の考え方、法律は平成7年以降の施行なのですが、それ以前の行為に関しても似たような考え方ができます。

 私がちょっと着目したいなと思っているのは、警告を欠いている。つまりこういう使い方をすると危ないよといろいろな製品には書いてあるのですが、アスベストのこの問題というのは、製造工場を出た段階で、包装紙には包装にアスベスト、○aと書いてあるらしいのですが、その後の表示が無い。これが非常に危ないということで、処理しようも無いほど情報が無いんですね。そこの問題を捉えて、やはり製造業者や自動車もそうだと思うのですが、そういうところは警告を欠いたものを垂れ流していることの責任を追求できる可能性はあると思います。それから労働問題、公害問題が結びついていると。最初に影響を受けるのは労働者だけれども、そういうのが積み重なって環境に出てくるということで、労働と環境と両方問題になる。労働上の債務不履行なり、賃貸借契約上の債務不履行、安全配慮義務違反、保育の委託契約上の安全配慮の義務違反ということで債務不履行もあります。工作物については、工作物責任ということで、無過失責任を所有者が負うと。ただその所有者が責任を追った後、原因責任者に求償できるということも現行法上、既にあります。こういうものが現行法上ある上に、今新法を考えようと言っております。アスベスト問題は因果関係が1対1ではっきりするものもあると思うのですが、本当にどこでもあるということで、因果関係がはっきりわからないものもある。そうであれば中皮腫というものになった人に関してはとりあえずまず救済をし、その汚染源者が誰なのかがわかる場合にはそこに戻っていくという形が考えられればいいかなと思っています。この問題は弁護士会でも今後取り上げていきたいと思っています。

B氏:一点補足したいのですが、ブレーキやブレーキライニングの話、自動車に使われているアスベストということで問題になっておりますが、実は先週くらいの私達の相談の中で今の車の補修の関係でアスベストがいまだに使われているという話がありました。それは運転席の真下にエンジンがあるような車の、振動を防止するために、アスベストの柔道の帯のようなものを今だに振動よけとして使っているということです。

 新車には無いそうですが、補修を頼んだようなときに今だにそういうものが使われているということです。これは情報ですから、これから確かめなければいけないのですが、アスベストが自動車から払拭されているというのはどうもそうではないということが最近わかってきています。

会場:片岡さんに伺いたいのですが、クボタからかつての作業環境の濃度がまだ出ていないようなことを先ほどおっしゃったと思うのですが、作業環境濃度は測定されて記録がとられていて、それが今後出てくる可能性があるかどうかということ。また、当時の除塵、集塵の方法についても彼らは何かまだ記録を持っていて、そういうものが出てくるかどうかということを伺いたいと思います。作業環境というのは、基本的に中の有害物質を外に出すというか、なるべく薄めるという発想もあったと思うので、その辺そういうことであれば敷地の境界のところは曝露側に即なると思うので、そういった情報が出てくるかどうか伺いたいです。

片岡:作業環境測定記録と、敷地境界の測定記録は、クボタが持っていると言って出しているものは、全部もらっています。残念ながら1975年以前のデータは無いと言っています。

会場:基礎的なことをお聞きしたいのですが、石綿の空気中の数ですが、どういう風にして測られるか教えていただきたいのですが。

外山:東京労働安全衛生センターで環境測定士をしている外山といいます。アスベストの空気中の測定は今村山先生がおっしゃられたようにフィルターに空気を吸い込んで、そこについたアスベストの繊維を1本1本400倍の顕微鏡で数えます。ですから、アスベストでないものも数えてしまう危険性があります。繊維状のものを全部数えてしまう。そういう問題があるのと、例えば一般環境で非常に濃度が薄いような所ですと、4時間吸引を続けないと濃度がわからないという、定量下限の問題があります。非常に限界のあるものだと考えていただきたいと思います。

司会:最後に、古くからアスベストに着目されてきた鈴木武夫先生が会場にいらしているので一言お言葉をいただけますでしょうか。

鈴木:今日は大変面白かった。私達が今から20年前、あるいはそれよりちょっと前に労働衛生の歴史的2回目のアスベスト問題のピークがあったんです。その時から比べると今日はとても面白かった。というのはこれだけアスベストに関する問題が研究、経験が非常に蓄積されてきたということを感じたからです。その中で、片岡さんにお願いしたいのですけれども今日おしゃべりになったことを何か書いておいてくださいよ。それは学問の論文にしなくていいんです。ことの起こりをこれだけ詳しくおしゃべりになったことはないですよ。他の病気で。ですから本当思いつきでいいから、今日お話になったことを、文献なんて必要ないから、残しておいてくれれば、このほんの2005年で問題が完全に解決しっこないわけですから、また起きた時に大変な参考になるということを一つ私はお願いしておきたいのです。

 それからもう一つ補償の問題がでました。片岡さんが思い切っておっしゃいました。犯罪であると。私もそう思います。20年前にはこういうことを言うことがいかに苦しかったか。それが今日片岡さんは堂々と言えるんですよ。これは世の中変わった。犯罪であるということは疑いございません。犯罪であるということは忘れないで胸の中にしまっておきたい。そうするならばそれに対する罰則といたしまして、致死罪が適用されればいいようなものですよ。補償といったってあんな金、あれっぽっちの、公害認定の例で言えば大したことないですよ。それでもっともっと予防ということを考えてやるための法的対策というものをやはりお考えになって、今の問題、それから長期にわたる問題について作戦を考えておやりになる必要があると私は思います。さらに今日は中皮腫に重点を置いてお聞きをしましたけれども、アスベストは何も中皮腫だけではないのですから、肺呼吸器関連影響という立場でわかりやすく論ぜられる時がくると思います。その時に今度こそ中皮腫の問題の時とは違って、次の問題の摘発の時代が来ると思います。その時にはもう対策を用意していて、行動をおおこしになることが必要になるのではないかなと思います。

 私の個人的経験を申します。私は十数年前に改築いたしました。その時に私は公衆衛生はやめておりましたので、暇があったわけです。それで、建築屋さんに聞いて、アスベストを含有している材料は使わないでくれよといったら、建築屋さんは全然知らない。ごまかして知らないといっているのではなくて。本当にしらない。私が見せろと、材料庫に行きました。そうしたらアスベストを含有していない建築材が無いんです。ですから驚きまして、私が頑としてアスベストの入っていない建築材料を使ってくれと言いました。すると建築屋さんはびっくりしておりました。そういう経験もあります。それから3年前ですが、ニューヨークの9.11事件、あのテレビの様子を見ていて、これはただごとではない。それでふと思いつきまして、あれはアスベストではないかなと。テレビの画面に出ている押し寄せる噴煙、そしてセメントの崩れてきたものだけではなさそうである。まだ火事は起きっこないわけですから、そうするとアスベストが相当入っているというので、事件が起きまして日本に放送されて数時間経たないうちにニューヨークの友達に電話をしました。どうだったお前のうちは大丈夫かと言うと、大変だ。すぐ市のほうから掃除が来て、そして掃除のものの分析をするということを言ったということです。そして50年かけて全市民のフォローアップスタディをやるといったそうです。その友達は何回かきますから、会うたびにだんだんニューヨークの計画がダウンしていくわけですが、どうやらぜんぜんやらないわけではない。私はニューヨークがアスベスト飛散による市民の影響を50年かけてやるということはどうも根本的思想としてはあるらしい。詳しいことはしりません。だから敵はものすごい脅かしをしたけれども、小さくなってきております。何かやるといっているんですよ。それは日本人として注意深く眺めていく必要がある。アスベストはどんな種類か、何に使われたのか等々含めて、注意して、今日本でやられているようなアスベスト対策は決して完全とはいえません。できることをやっているようにしか思えない。さらに今日お話をいろいろ聞いていますと、あなた方が子供の頃に使ったベビーパウダーがアスベストが入っている。お母さんが使ったベビーパウダーによって、そろそろ中皮腫が出るかもしれないよという一言が伝わることによって、アスベストのソース、原因というものが我々の社会生活の中であらゆるところにあるということを考えていただきたい。

 それからくり返しますが、大至急やっていただきたいのは予防です。予防に重点を置いた行動。いろいろあるでしょう。予防に重点を置いた行動をお願いいたします。私達ができなかったことですから。

司会:鈴木武夫先生は1940年代後半から労働衛生専門で国立公衆衛生院の院長をされました。アスベストのことについても数十年前から着目をされていた先生です。今日は本当にありがとうございました。時間がそろそろございませんので、各シンポジストからお一言だけ言っておきたいということがありましたらちょうだいして終わりにしていきたいと思います。

村山:2つだけお話をしたいと思います。アスベストを日本は1000万トンくらい輸入して、使ってきたわけです。これを一気になくすわけにはいきません。ちょっとアスベストと長く付き合うという発想でやっていかざるを得ないので、パッと問題が起きて、また問題が沈んでしまう。ちょっと対策をしたら、それで終わりという話ではありません。そういう意味では長い目で付き合っていくということを頭に置きながらやっていただきたいというのが一つです。

 もう一つは、やはり環境ばく露といっても、公害的側面と環境問題としての側面がある。特に公害的側面については今後いろいろ調査が進んでいくと思いますけれども、やはりアスベストを考えると昔の公害と違って、中皮腫については非常に症状がはっきりしているわけですね。ただその原因がいろいろある。先ほど交通の問題をおっしゃった方がいらっしゃいましたが。車からも出てくるかもしれない。普通の大気中にもあるし、室内にもあるし、工場からも出てくる。いろいろな影響を考えられるので、どこからでてきたものが原因なのかということを特定することが難しいような気がしています。その突破口の一つとしてクボタの話があると思いますし、非常に慎重にその当たりはやられていると思うのですが、そういった点を詰めていただきながら、公害的側面というところも強調して、企業の社会的責任を明らかにする必要があるだろう。少なくともこれまでどういったアスベストをどれだけ使ってきたかということを企業としては、どんどん公表していいのではないか。先ほどの作業環境の濃度に関してもです。そういった情報をどんどん提供していく。それが社会的責任の一つではないかなと思います。

片岡:一言で言えばクボタがこういう対応を取ったのは、始めに患者さんが3人、どうなっとるんですかと言ったことが全てだったわけです。それは非常に重たい問題なのですが、やはり今僕が考えているのは、我々の運動もそうなのですが、今だに一番ひどい目にあった患者さんが声をあげないと何もできないのか、我々の社会はということが非常に残念でなりません。早くそういうことでない社会になるように頑張りたいと思います。

内山:私は先ほど鈴木先生がおっしゃったように、ひとつの公害問題としては公害問題と思います。もう一つは一般環境としてのアスベスト問題というのがどうしても出てくる。これはぜひ新たな患者を出さないような未然防止の観点を充分に生かした対策をとっていきたいと私は思います。

 先ほど申しましたようにいろいろな法律や規則はあるのですけれども、それがあるだけではなかなか実際には動いていかないというのが現状です。これはまた市民の方の関心も一時的なものに終わってしまってはだめです。ぜひうまくいくようなシステムを作らないと長続きしません。ですから、今後の解体や改築で、一般環境が汚染されないようなシステムを皆さんと一緒に考えていって、それから皆さんと一緒に行動していって、今後はこういう不幸なアスベストばく露による中皮腫は起こさないというようなシステムづくりをしていきたいと思っております。

司会:おそらく来年の通常国会にかけてアスベストに関する法律のようなものも作られるというように聞いています。ぜひそういう立法の部分についてはこの間の反省を踏まえて必ず患者や我々NPOがちゃんと絶えず参加するような行政システムというのを作っていただいて、しかも省庁縦割りではなくて内閣府なら内閣府に責任があるような人が居るようなシステムを作っていくことが必要です。これだけの物質、これだけの被害が予想される中で、こういうものを2度とくり返さないような行政システムに作り変えるということが必要です。そのためには多くの方のご協力が必要だと思っていますので、これからもこの参加した方の名簿を含めていろいろなご協力をぜひお願いしたいと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

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