石綿関連疾患の診断・ケア・飛散防止対策 石綿関連疾患総論(1/12)

Lecture by Dr Natori 2005

石綿関連疾患総論(1/12)

 アスベストは溶岩等が固まる過程でできる繊維性の珪酸塩鉱物で6種類くらいあります(1)。主なものは3種類で、クロシドライト、クリソタイル、アモサイトです。

 クロシドライトの原石の写真です(2)。基本的に目で見える1本の繊維自体が、実は数千本、数万本の繊維が寄り合わさって出来ています。実際、大気中の石綿は写真の様な状態ではありません。又岩石の状態であれば、吸入されることもありません。

 典型的な状態の、劣化したクロシドライトの写真です(3)。これが通常の吹き付け石綿の状態だと誤解されると困りまして、こういう状態は極めてまれです。

 実際の吹き付け石綿は上の写真のような状態が多いのです(4)。白い絨毯のように吹き付けてあるので、しばしば吹き付け石綿があるということ自体を見逃してしまう人も多いです。このことが問題の一つです。建築業者でも、良く知らないで間違う方もいます。十分知識のない建築関係者や自治体担当者が見逃すことも時々過去におきた訳です。吹きつけ石綿は、建物にある自体で石綿が飛散する場合も多く、除去が原則とされています。

 吹き付け石綿(60%前後石綿が含有していた)は1975年に禁止されます(5)。しかしその後も石綿が5%以下の重量なら構わないとされたため、現場レベルではロックウールの中に実際は10%、20%の石綿を付着性を高めるために含ませていたのです。含ませる重量は岩綿(ロックウール)の性能改善により減少していきますが、1990年頃まで湿式岩綿中心に続いたのです。ですから1975年から1990年頃までの岩綿吹き付けは、肉眼で一見すると石綿が含まれているのか否かがプロでも分かりません。本当に岩綿だけのものもある一方、石綿をある程度含有しているものも多いので分析をしないと分からないのです。今のところ公には1990年までとされていますが、その後も1995年まで滑り良さのために混入したという人もおり、90年までという数字自体が変更される、不透明な部分があるところにも問題があります。吹き付けのアスベストと、アスベストの入った吹き付けの岩綿、この2つが非常に飛散性の高いもので、石綿(いしわた)障害予防規則で、レベル1とされています。

 ここから紹介するものは、吹き付けアスベスト(1%以上石綿を含有し、石綿則ではレベル1)ですが十分調査されていない材質です(6)。どのくらい飛散するのか、その濃度といった調査が非常に少ないものです。国からいろいろな建物調査の通達が出ていますが、現場レベルでは十分知識がないと石綿(アスベスト)含有の確認がなかなか出来ないものです。上はパーライト吹き付けの写真で、石綿含有です。

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