地震とアスベスト シンポジウム2004 阪神淡路大震災当時の状況2/2

The 3rd Symposium 2004 Earthquake and Asbestos

シンポジウム プロローグ 阪神淡路大震災当時の状況(2/2)

 古い鉄骨でこういう風な形で吹き付けられたところが多い。神戸市内の中央区、繁華街ですと、有名な中華料理屋さんを含めて多かったです。

 『被災地のアスベスト対策を考えるネットワーク』を作っているボランティアの人達とあちこちへパトロールをすると、このような解体をする前の段階で、吹き付けアスベストが見つかれば神戸市等に通報して、キチンとした解体をしてもらえるように頼みました。当初解体をしている時にはこの辺の鉄骨に吹き付けアスベストが見つかって、神戸市に通報して一度工事を中断させて、解体工事をしたということです。

 建物の所有者の方でも建築年代が古くなると、アスベストが吹き付けてあるのかわからなくなってしまうという場合があります。そういうことも、今後の課題です。今いる状況ですけれども、1224棟の倒壊したビルがあって、100棟ぐらいの予想ですが、例えば神戸市の場合には、57棟除去工事をして、そのうちの13棟が不適切な対応だったようです。

 あるいは逆に、労働基準監督署への届出件数というのは51件で、神戸の場合、監督署は40件しか知らないというようなことです。神戸市が把握したアスベスト撤去工事の57件ですけれども、例えば、市が発見した時にはすでに解体撤去が終わっていたのが4件で、工事の最中が4、5件ありました。

 先程、三者契約で災害廃棄物として押さえている場合にはここの数字に出てくるので、比較的日本ではまず今回はうまくいったようです。しかし、やはり不適切な工事もあったと思っております。

(被災地のアスベスト対策を考える)ネットワークを作ってアスベストによる環境汚染というものを考えてきたわけですが、例えば環境庁の継続調査ですけれども、もう4月・5月の段階で、一番大事な情報が数値でしか報告されていませんでした。

 市民にとっては自分の所の近くにアスベストがあるのではないか、というような問い合わせがあってネットワークを作ってから大体、4月頃から毎日2時間位電話の相談がありました。それで言いますと、環境庁の関係者の方から場所を教えてもらってそれを全部公表して、どういう所が高いのかという話をしました。例えば淡路島、こういう所はおそらくビルも多くはありませんが、高い数値が出ています。

 神戸市のほうも、少し落ち着いてから5月から8月にかけて30ほどの小学校で測定をし、平均で1.0本/Lと出しましたが、地震から日が経っているので、平均値がどんどん下がっていました。

 その中で、平均をすることにどれだけの意味があるのかという形で、なかなか環境評価をしようと思っても、やり方を知らないと何をやっているのかわからないという経験をしております。環境への飛散の結果という形で最終的には、1993年度の環境庁の0.14本/Lや0.17本/Lという数字よりも、数倍高い状態で収まったということです。

 その後どうなったかということで追跡調査を行いましたが、残念ながら環境庁のほうでは平成7年度を境にその次の年に大気汚染防止法を改正したということで、環境モニターはされておりません。

 今、日本全国のアスベストの環境中濃度は、いくつかの地方自治体が自分で調べているデータ以外にはありません。最後に環境庁がやったモニタリングの平均値は0.4本/Lというような形です。尚、スライドのm3はLの間違いです。兵庫県は0.05から0.04本/Lです。

 平成6-7年は環境庁の継続調査の続きがありますが、神戸市内の8ヶ所についてはある程度継続されて調査をされています。

 環境リスクを計算するという話になりますと、基礎データみたいなものが必要になるのではないかと思われます。それで、いくつか色んな地方自治体が発表されているデータをホームページで見ますと、宮城県が昨年度の調査で1Lあたり2本や、1.何本か2.何本というような数字を出しています。大阪府が0.1本/L前後です。自治体ごとに非常に測定結果にバラつきがあり、何をもって環境中の濃度というのか、計測技術の問題もあると思いますが、アスベスト問題の実体が把握できていないと思っております。

 一応私が実際経験をした吹き付けアスベストの除去のお話と環境中のモニタリング、環境庁のアスベストの濃度がどれくらいあるかについてご説明をしました。後は配布物の3ページの表1と表2の、環境庁のアスベストの追跡調査、環境庁の滞在現場付近の調査を見て頂きたいのですが、解体現場付近の調査というのは基本的には吹き付けアスベストの無い解体作業です。これだけ平均値は下がってきていますが、最大値は後のほうまで高い濃度で、1リットルあたり数本のレベルで飛散をしています。こっちについては吹き付けアスベストの中身ですね、非飛散性のものがあったのか、或いはそういうものもなかったのかということもわからない。非飛散性のアスベストがあって、こういう数値があると、やはり今後建物を解体する場合、地震の後に解体作業が困難な場合、どういう風にやっていくべきかということを考える資料としては非常に貴重な調査だと思うので、この辺をこれからの地震対策に使って頂きたいという風に思っております。以上です。

 

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