石綿および関連疾患の重要な最新の情報

Latest Information on Asbestos and Related Diseases

 このページは、石綿関連疾患及び石綿に関して、重要な最新の情報について、提供していくページです。しばらくの間は、関係者が試行をしながら情報をお伝えして参りますので、最新ではない場合や、重要な情報をお伝えしそこうかもしれません。その際は是非、メール等でご指摘頂ければ幸いです。

2022年1月20日 後腹膜線維症について

後腹膜線維症は石綿関連の疾病です。国際的な石綿関連疾患の診断基準を定めているヘルシンキ基準2014が、2014年に石綿関連疾患と定めました。

 肺がんや石綿肺、胸膜プラークの様に罹患される方が多い疾患ではなく、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚の様にかなり頻度の稀な疾患になります。2022年現在で、あまり知られていないため中皮腫・じん肺・アスベストセンター所長で、呼吸器内科医の名取雄司の後腹膜線維症についての解説を掲載します。

2021年9月25日 ニボルマブ(Nivolumab)とイピリムマブ(ipilimumab)併用群で胸膜中皮腫の全生存期間は18.1月と対照群の全生存期間14.1月を4か月延長した論文、と胸膜中皮腫の今後の治療の考え方

 2021年1月30日の雑誌LANCETの397巻375―386ページに、「手術不可能な胸膜中皮腫に対する、ニボルマブ(Nivolumab)とイピリムマブ(ipilimumab)を併用した第1選択治療(CheckMate 743):多医療機関によるランダム化比較試験、公開の第3相治験」が掲載されました。ニボルマブ(Nivolumab)とイピリムマブ(ipilimumab)群の全生存期間は18.1月で、対照群の全生存期間14.1月を4か月延長させました。70歳以上、ステージが進んだ手術不可能な方の胸膜中皮腫の第一選択治療法は、ニボルマブ(Nivolumab)「商品名オプジーボ(小野薬品)」とイピリムマブ(ipilimumab)「商品名ヤーボイ(ブリストル)」という時代になりつつあります。中皮腫・じん肺・アスベストセンター所長で、呼吸器内科医の名取雄司のニボルマブとイピリムマブについての解説を掲載します。

2015年10月1日 胸膜中皮腫及び腹膜中皮腫に対する免疫療法薬の治験について

中皮腫・じん肺・アスベストセンター 医師 名取雄司

 胸膜中皮腫の治療と言えば、手術、抗がん剤、放射線療法、最後に免疫療法とされてきたが、本年10月から既に治療を受けた胸膜中皮腫と腹膜中皮腫に対する免疫療法薬の治験が開始されることとなった。治験の実施はアストラゼネカ株式会社で、治験する薬はtremelimumabと呼ばれる薬だ。ひとにはがん細胞を傷害するT細胞という免疫細胞があるが、tremelimumabは細胞傷害性T細胞を活性化する作用を通じて中皮腫を攻撃する。類似の免疫療法薬としてipilimumab(Yervoy)があり、海外で皮膚悪性黒色腫向けに市販され日本でも今年7月に製造販売の承認を取得した。

 Tremelimumabは、2009年から2012年までイタリアで中皮腫患者29名に投与、27か月の追跡で2名に著効を認め1年生存率48.3%、2年生存率36.7%であった。重篤な副作用として、激しい大腸炎と下痢2名、1名に肝障害が認められた(Calabro et al, Lancet Oncology 2013)。2013年から一次あるいは二次治療(手術および抗がん剤治療)で悪化がみられた患者さんに対し世界的治験が開始され500名規模となり、今回日本でも治験開始となった。

 治験に参加できる人は、一次治療としてペメトレキセド(商品名アリムタ)と白金製剤の併用療法後で病勢が進行した方、一定の活動能力があること、血液と肝機能・腎機能が一定程度あること等の人が対象とされており、治験が受けられない除外基準も複数定められている。全員が治験を受けられるとは限らないので、治験を希望する方は、まずは現在受診されている病院主治医からアストラゼネカ株式会社の窓口(電話:0120-189-115, Eメール: RD-clinical-information-Japan@astrazeneca.com )に連絡を取ってもらうようにお願いしていただきたい。

 現在受診されている病院主治医と十分相談後紹介状等をもって、治験が行われる全国10数病院へ受診して今回の対象か否か最終判断することとなる。中皮腫の治験を行う病院として、北海道、東京、神奈川、愛知、静岡、大阪、兵庫、岡山、広島、山口、愛媛が予定されている。治験中の数か月以上は治験病院が主な通院先となる可能性が高いので、現在の主治医とよく相談してほしい。

2006年6月26日 ペメトレキセド(アリムタ)について新規の製造販売承認申請

 日本イーライリリー株式会社は、ペメトレキセド(Pemetrexed : 海外での製品名Alimta[アリムタ])について、悪性胸膜中皮腫を効能・効果として、新規の製造販売承認申請を厚生労働省に行いました。厚生労働省の早期の承認が待たれます。詳しくは同社HPをご参照ください。

2005年10月27日 Pemetrexed(アリムタ)の国内での臨床開発の現状

 Pemetrexed(アリムタ)の国内での臨床開発の現状を、イーライリリー社がHPで掲載致しました。詳しくはこちらのHPをご参考下さい。

2005年7月 悪性中皮腫の治療薬、ペメトレキセドの治験開始

 PEMETREXED(ペメトレキセド)<商品名 アリムタ>(日本イーライ・リリー社開発)の悪性胸膜中皮腫(あくせいきょうまくちゅうひしゅ)の患者さんを対象とした第I/II相臨床試験が、4月より幾つかの医療機関で開始され、7月には全国数カ所の医療機関で実施されました。悪性胸膜中皮腫で、今まで抗ガン剤の点滴を受けていない方に限定した治験であり、既に抗ガン剤の点滴を受けた方は対象にはならないそうです。手術や放射線のみ受けて、抗ガン剤の点滴を受けた事がない方は対象となります。悪性腹膜中皮腫(あくせいふくまくちゅうひしゅ)の方は、残念ですが今回は対象になりません。治験を受けられる方については、それ以外にも限定があります。詳しくお知りになりたい方は、ひまわり診療所HPを御覧ください

中皮腫腫瘍マーカーアメリカで申請へ

 フジレビオ ダイアグノステックス社(腫瘍検査の世界的なリーダー)は、2005年4月29日FDA(アメリカ食品医薬局)に、西オーストラリア大学のBruce Robinson教授らのチームが開発したメゾマーク(MESOMARK)の承認申請を行いました。メゾマークは悪性中皮腫の新しい血液での検査方法で、悪性中皮腫細胞によって血流に放出される溶解性のメゾテリン関連ぺプチド(SMRP)で、中皮腫の腫瘍マーカーの商業化は今回が初めてです。検査は簡単で患者さんは採血で血液を提供、分析機関は結びつくモノクローナル抗体を使って血液中のSMRPの量を計測します。中皮腫の場合に初期でも陽性例があり、また陽性率も高いのですが、胸膜の他の病気でも値が上昇するので、疾患の判別が難しい難点があります。石綿曝露のある人の毎年の健診にいれておいて、以前より高値になったら念入りにCT等で調べるという使い方や、抗ガン剤の効果判定にも使えると思われます。日本での使用は、今後とされています。

悪性中皮腫の治療薬、ペメトレキセドの治験の現状について

 2005年1月25日報道各紙に、厚生労働省の第1回未承認薬使用問題検討会が、PEMETREXED(ペメトレキセド)<商品名 アリムタ>が、「治験制度」で保険診療と保険外診療の併用(混合診療)を認める事を了承された、との報道が行われました(ファイル参照)。悪性中皮腫の患者さんから、すぐに使用できる病院の問い合わせが数件よせられました。関係者に伺い、確かめた内容は以下の通りです。

 2005年1月24日、厚生労働省が開催した第1回未承認薬使用問題検討会において、3つの抗がん剤について検討が行われました。そのうちのひとつである、悪性胸膜中皮腫治療薬のペメトレキセドについて、優先対面助言品目に指定されていることが公表され、製薬会社に対して早急に治験を進めるよう要請することが決められました。優先対面助言品目に指定されているが、承認見込み時期については、現時点ではまだわかりません。24日の検討会では、ペメトレキセドに関しては上記以外のことは検討されなかったそうです。

 ペメトレキセド(日本イーライリリー社開発)の悪性胸膜中皮腫を対象とした治験については、第II相試験準備中で、できるだけ早く治験を開始できるよう準備を進めている段階です。今後、新しい情報が入り次第、お伝えして参ります。