シンポジウム「吹きつけ石綿・石綿含有建材の建物調査 何が現在適切か?」

司会(名取): おはようございます。司会を担当致します、アスベストセンターの名取と申します。今日は講師の先生から色々なお話があると思いますが、今年の7月以降、吹きつけ石綿・石綿 含有建材の建物調査で3省庁から複数の通達が出され、調査が進行していると思います。お手元 に各省庁が出した通達がありますが、よく見ると整合性が全くない状態で、1988年の文部省通達 が犯した誤りと同じ事態も懸念されます。
 まず最初に石綿(アスベスト)の建物調査について造詣の深い、環境コンサルタントの大越氏に本来なら建物調査はこうすべきだというお話をいただきます。
 次に東京都の自治体の中で、網羅的かつ総合的な対策を立てている練馬区企画課課長の琴尾氏から、自治体として既に実施している対策の話をしていただきます。
 3番目に神奈川労災職業病センターの西田氏から、神奈川の自治体に今年の6月段階でアンケートを実施し、自治体が今まで自治体の建物調査をどの程度実施 していたか、報告をいただきます。
 最後にアスベストセンター事務局長の永倉氏から、現在の通達の問題点をまとめていただきます。その後、会場の方を含めて30分ほど討論の時間を設けます。では、大越慶二さんお願いいたします。

大越氏: ただいまご紹介に預かりました大越です。私は、環境コンサルタントという肩書きですが、一方ではアスベストの処理関係をやっている業者です。本日こちらにお招きいただいたのも、業界の中から見た、本テーマについての多少なりとも意見を話すということだと心得ております。
 まず、お詫びを申し上げます。お手元のレジメですが、6月下旬からここ2ヶ月間というものは本業を寝ずにやらねばならぬほどパニック状態でして、本来の目的ではなかったのですが、5キロほどダイエットできるほどの中でやっておりましたため、名取先生からレジメを早く作ってくれというタイムリミットの1時間前に作りました。主催者側のご意図に沿わないレジメ(資料/「石綿障害予防規則施行後の問題点」)の部分もあるかと思いますが、説明の中ではできるだけそのへんをまとめてお話しますので、お詫びさせていただきます。
「石綿障害予防規則施行後の問題」
 今般のアスベストは6月下旬からクボタ、その他アスベスト関連企業さんのマスコミ報道から浮き彫りにされてきました。これは一概に企業さん云々だけではなく、私が思うに、7月1日から施行された石綿(いしわた)障害予防規則が起点になって、各企業がこのような形で表面上に出てきたと思っています。

 今日の話は、石綿障害予防規則、別名は石綿則(いしわたそく)と言いますが、そちらの視点から話をさせていただきます。石綿障害予防規則は新しいアスベストの法律、今までは労働安全衛生法、特化則、大気汚染防止法、自治体の条例等がありましたが、これはあくまでも全体的な規制で、アスベストに関して初めて出たものかと思っています。
 その中で大きな問題が3つあります。特に、発注者の責務。これは石綿則第8条、建物に使用されている石綿等の使用状況を通知しなければならない。ということは、当然、使用されているアスベストについて把握、調査しなればいけないということです。9条、10条は、建物所有者に義務付けられたものです。今までの法律にはなかったものです。今までの法律は全部、事業者、ゼネコンさんとか大業者さん、サブコンさん、そのあたりを事業者さんと称したと思います。

 今回は、建物所有者に初めて義務付けられたもので、その他に事業者の責務とか労働者の責務がほぼ明確にうたわれてきた。特にこの中で事業者の責務というのは、今までの労働安全衛生法、大気汚染防止法、特化則についてはほとんどの場合、吹きつけアスベストをターゲットとしたものですが、今般の石綿側の場合はアスベスト含有建材すべからくにおいて法律の枠決めをしたというところも大きいと思います。
 同時に、労働者の責務。これは保護具の管理、みなさまもマスコミ報道でご存知だと思いますが、横須賀市の主婦がアスベストに関する疾病にかかりました。その主婦はアスベストを見たことも聞いたことも触ったこともない状況で、よく調べたらご主人がアスベストに関わっていて作業着を自宅に持って帰っていたと。家で洗濯をするときに、はたいたりポケットに入っているほこりを出したり、そういうことで粉塵にまみれたのではないかと私は想像しています。こういう二次被害的なものも含めて、たまたま石綿側ではここもうたっている。石綿則は一方では斬新な法規制であると思っています。

 さて、石綿則のなかで、建物所有者や事業者は、改修・解体工事を行う場合、また吹きつけアスベストに関する粉塵の著しく飛散する恐れのある作業所においての改善をうたわれていますので、調査が必要になります。その石綿則による建物調査は、設計図書や竣工資料などで調査をしても良いですよというふうになっています。
 私はアスベスト工事に携わっている関係で、この6月下旬からは企業からのアスベスト調査依頼を毎日何箇所もちょうだいしておりましてやっております。その前も改修・解体工事を行う場合は、ゼネコンさんや企業さんに呼ばれ、アスベスト処理をしたいのでどうしたらよいかというときに、設計図書を見せてください、竣工図面を見せてくださいとお願いすると、大半の場合は設計図書がないんですね。半分といってよいでしょう。残りの半分は図面があっても、ほとんどの場合が設備図面です。
 つまり、建物の図面はなくっても良いが、設備の図面、配管やダクト、電気は常時、改修・改造を行わなくてはいけない資料ですので所有者さんは大事にされる。しかし我々には何の意味もない。今回の石綿則において、図面で判断をしなさいというのは、私としては難しいと思っております。

 次にスクーリング、現地調査を行いますが、調査員の技量の問題が出てきます。最近は石綿除去業者が代行してやることが多いのですが、業者でも経験的に不足の方も多いと思っています。
 一例を申し上げると煙突のライニング材の漏れが多いのです。ビルの場合は冷暖房のためにボイラーをたきます。煙突部分にアスベストをまいたライニング材を入れていますが、アスベスト材が表面に出ている場合は見えます。ですが、ある年度においてはその上にコーティングをされてしまった。非常に硬いセメントスレート版をコーティングして、なおかつボイラーの煙ですすけているので、一見すると鉄板に見える。そこに私が呼ばれて、図面では商品名カポスタックと書いてあるが鉄の筒だと言われた、と。良く見るとコーティングされたもので、0芯にはアスベスト。これを調査員が鉄と見間違えてしまう。調査員でも勉強不足の部分もあるのかなと思います。
 吹きつけアスベストや吹きつけロックウールは、ちょっとした経験があれば、吹きつけ材ということはある程度分かります。ただし、成型材や他のものになると、なかなか過去の経験がないと分かりません。にわか勉強でやると、石綿含有の成形板を非含有と判断されてしまう。その判断によって解体屋さんが間違った方法で実施してしまうということもおきます。
 また、吹きつけアスベストが、外から見えにくい部分の判断をできる力量の問題があります。ビルの外壁が鉄板のパネルで囲われた外周材の内部に石綿が吹きつけられていることがございます。表面から見た場合、鉄板1枚しか見えません。調査をする時点では建物が使われている時期が多いので、その鉄板を剥いで見ることは不可能です。吹きつけ石綿はないだろうという簡単な判断で実際に解体・改修工事に入ると、パネルを剥いだらアスベストが出てきて慌ててしまった、と。すると、どうしても完全な工事ができなくなると考えられるわけです。
 ですから、調査をする人間はできるだけ実務経験や勉強をした者でないと精度の良い報告は出来ないのではないか。間違った報告の元で工事を行うと、アスベスト処理における公害が大きくなってしまうと思います。理想的な調査には、的確な判断のできる資格(ライセンス)を持つ人間の育成が必要だと思います。

 現地調査では分からない材料もあります。吹きつけアスベストは経験があればまず簡単に分かるのですが、岩綿(ロックウール)の吹きつけ材では、1975年から1988年頃には、アスベストが公的にも5%以下で入っていた時代がありました。実際は付着が悪いと現場レベルで更に吹きつけ石綿等を増量しまして、実際の石綿(アスベスト)含有量が多かった事例も多々ある訳です。
 これらは一見するとロックウールで、ロックウール吹きつけは今でも石綿含有0%で建築に使われています。岩綿(ロックウール)の吹きつけ材は、目で見ただけでは判断が付かないので、標本を採取して(サンプリング)、専門の第三者機関に送ってX線分析を行う。それで分からない場合は分散染色です。新聞にも載っていましたね。ある薬液につけて、それを400倍の顕微鏡で見ると、アスベストの種類によって色がブルーやピンクに見える分析方法です。それで最終的に判断します。そういうことで建物を調査していく必要があるのではないかと思います。

 この2ヶ月間いろいろ見させていただきましたが、一般の方がマスコミ報道に触れて、我々もご相談をいただきます。ここでマスコミの方に若干苦言を呈すれば、マスコミで報道するのはオールアスベストです。何でもアスベスト。ですが、私はすべからくアスベストが悪い、良いとは言いません。緊急性を要するものと要さないもの、やや安心して良いものと安心できないものの区分けが必要だと思います。
 1ヶ月半前にあるテレビ局の報道に立ち会い、一般民家に行きました。そこのお宅の図面を見させていただくと、アスベストをたくさん使っていました。成型板、スレートです。するとディレクターさんが、「大越さん、こういうところに住んでいると危ないということを言ってもらえませんかね」と言われた。私は、「それでは帰らせてもらいます。他の方を呼んでください。私はそうは思いません。」と言いました。
 一般住宅には確かにたくさん使われています。屋根瓦から内装材、外壁材…。
 ただほとんどの場合、固形化されて、コーティングされています。ですからその場においてはそんなに危険性は伴わないと思う。それをあえて私の口から「危険がいっぱいですね。」と言わせるということは適正な報道とは思わなかったので、「帰らせてもらいます。」と言わせていただいたことを覚えています。
 マスコミの中にはそういう方もいるので、今後石綿を報道される場合は、くれぐれも飛散性の段階に応じた報道を是非していただきたいと思います。
 そういうことで、一般の方も全部同じです。床のPタイルも吹きつけアスベストも、同じレベルで見ている。そのために私は何度も住宅に呼ばれました。脱衣場の床タイルを示して「これはアスベストですね」「危険ですね」と言われます。私は、緊急度合いとしてはそんなに問題はないとご説明させていただいておりますが、一般の方はマスコミ報道を絶対的に信頼しています。この2ヶ月間私は見てきて、それが十分に分かりました。ですからマスコミさんはできるだけ適正な報道をしていただきたいとお願いします。
 同時に、我々の業界もいけません。先ほど言った建物の調査も業界の人間がほとんどやっています。経験不足の人間があたかも熟知したかのようにお客に報告するところも見受けます。こういうところも気をつけなければいけませんし、値段も便乗値上げしているところもあるようでして、そういうところも皆さんとよく話し合うようにしなければいけないのではないかと思います。

 今回、国交省から民間施設、1000平米以上の建物において調査をされています。この間の2例を申し上げます。
 神奈川県内の某市のある大きいスーパーさんに呼ばれまして、実は1990年にスーパーを建てたが、そこの耐火被覆が吹きつけされていました。ロックウールですね。これをアスベストかどうか判定してもらいたいという話でした。それが8月4日か6日でした。その市に報告するのは8月19日までで、ご存知のとおり正式なX線回折とかをすると1ヶ月から2ヶ月はかかります。当然、8月19日までの報告には間に合わない。
 どう報告すれば良いのかというので、私が市に問い合わせてみました。すると、市役所の建築担当者が、「見て分かるでしょ」というので、「馬鹿じゃないのか」と言いました。「見て分かるくらいだったらそんなことは言わないし、日本全国目で見て分かる人間はいませんよ。経験のある私でさえ分からないものをそういう言い方をするのはおかしい」、と。すると、「実は、県からそういう指導がありました」、と。とどのつまり何を言うかというと、「では、それは『ない』でいいです」、と。吹きつけアスベストでなく吹きつけロックウールなのだから、『ない』で良いと。そこは15000平米ある現場ですよ。
 東京都のある区でも同じようなことがありました。図面がなくてよく分かりませんというと、「分からないのだったら良いです。出さないで良いです」と言われました。
 つまり私が言いたいのは、国交省が9月19日までにまとめる数値はどこまで信頼性があるのかと。
 この2例でわかりますように、データが上に上がっていく間に、必ずしも100%信頼されるデータではなくなるのではないかと思っています。

 最後に、今回の建物調査の問題点と石綿則についてです。
 ひとつ目に、行政の対策不備と準備不足の問題です。今回の調査については準備不足です。急に社会が騒々しくなったので、行政も何かやらねばいけないというパフォーマンスで、9月19日とか、その間の設定の仕方がどうしてもおざなり、パフォーマンスではないかと思います。
 石綿則のなかでも内容が不備の点があります。石綿則の特別教育という面で、私はいろんな業者さんの特別教育の講師として動いている中で、いろいろ質問を受けますが、たとえば、「飛散の恐れのある」という言葉のベースがないのですね。
 どういう数値のものが飛散の恐れのあるものなのか、何の定義も無い。法律で簡単にうたわれていて、誰がそれを判断するのかということになる。
 その他、アスベストに従事する作業者は、常時アスベスト作業のときは特別健康診断を受けなくてはいけなくなった。ところが「常時」というのはどういうことを言うのか。「常時」の解釈が必要になります。石綿則もやや言葉足らずの部分が多いと思います。

 今後の提案ですが、アスベストの場合、縦割り行政による悪弊が非常に良く出ています。国交省、環境省、厚労省おのおのが通達や条例を出している。その上にかつ自治体による条例があって、統一性がありません。
 ひとつ面白いものを申し上げます。同じ庁内でも全然話し合いがない。今回、アスベストの区分けが石綿則のなかにあるのはご存知でしょう。レベル1,2,3となっています。これは飛散性の著しいものがレベル1、それに準じてレベル2、レベル3となっています。ダイオキシンもレベル1から4まであります。ところがレベル4が粉塵の著しい危険性のあるところです。まるきり逆です。マスクにおいてもそうです。これも逆です。
 同じ省庁の中においても課が違えばレベルの組み方が全然違う。これでは何のためにレベルをつけているのかと言いたい。これと同じように法律用語も全然違ってきます。石綿則ではレベル1のアスベストが、廃掃法においては飛散性と非飛散性です。非飛散性とレベル1は、何の因果関係もありません。そのへんを統一しないと、皆さん混同するだけです。
 今話した事は、少し難しくて参加者の8割方は何を言っているのか分からないとも思います。まず法律用語が全然統一されていないので、できるだけ統一見解が必要だということです。同時に、監督官庁の意識レベルを高めて欲しい。今回の騒動になってから改修・解体現場において官庁関係の査察があります。我々は別にあってもなくても良いと思っています。なにゆえに来なくてはいけないのか。法律は全然変わっていません。何も変わっていない。石綿則のなかにもパトロールしなくてはいけないという条文はありません。今までの特化則や廃掃法に絡んでいるだけです。
 その法律は10数年前にできています。何ゆえに来るのか、さらに来る人が全然分かっていない。これは仕方がないのかもしれませんが、都心部の届出窓口担当者は非常に良く分かっています。中央区、千代田区、港区などは年に60くらいの届出を受けていますからアスベストに関しては勉強されています。ですが、少し郊外や地方に行くと、アスベストに関わったことがないので、届出に行くと逆に我々に教えてくださいと言う。このへんも行政として、監督官庁として勉強会などを開く必要があると思うしだいです。
 本来は調査が主眼ですが、最初に申し上げたとおり、私は石綿則の視点でお話申し上げました。その辺をご理解いただいて、私の話とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

司会(名取): 国交省が民間の調査を指示されていますよね。実感としては大体何%くらいの正確さだと思いますか? 今年中に各省庁から数値の報告が出てくる訳で、その数の多さが報じられるでしょうが、問題は数に出てこない吹きつけ石綿(アスベスト)がどれくらいあるかということです。
 これは実際に現場でやっている方の実感でしかないと思うのです。民間の国土交通省さんの今回の調査は、どのくらいが正確に捕捉されるという感じですか?

大越氏:最近は地方のほうになかなか行けないので、実態的把握は出来ません。首都圏部で想定させていただくと、65%~70%の信頼性かと思います。

司会(名取): 文科省関係の調査ではいかがですか?

大越氏:平成4年くらいの文部省の発表で、文部省下の施設におけるアスベスト対策は95%を割ったという記録があったと思います。ここのところは、竹の子のように次から次と出てきて、実は夏休み中に行わなくてはいけないという急な話でしたが、もともとアスベスト処理業者さんは非常に小規模のために対応できなくて、9月や10月に延びるというような話も聞いています。実態的なことは分かりませんが、やはり教育施設におけるものはほぼ対策が講じられると思います。

司会(名取): 教育施設の吹きつけの捕捉自体が、100%いくという感じですか?

大越氏:少なくとも首都圏は100%に近い数値になるのではと思います。

司会(名取): 首都圏はまだ良い方でしょうが、他の地域との落差が大きいですよね。

大越氏:吹きつけアスベストに総称されているものの中で、ロックウールの判定がつかない場合が多いでしょう。その他の吹きつけも調査から落ちている。その他の地域においては、学校でも安易に石綿含有のないロックウールと判断付けてしまうケースが案外あると思います。

司会(名取): 地域間格差、調査に厳しい住民がいる所、職員で詳しい人のいる所のチェックは厳しいが、そうではない自治体や地域では今回も吹きつけ石綿(アスベスト)の調査が十分ではないと思ったほうが良いという事かと思います。どうもありがとうございました。
 続いて、練馬区の琴尾氏からお話をいただきます。

琴尾氏:練馬区企画課長の琴尾と申します。本日のシンポジウムは名取先生からご依頼いただきまして、先進的自治体としての取組みということで、おこがましいのですが、練馬区の取り組みについてお話させていただきます。私は、企画課長ということで、技術畑の人間ではありません。
 建物についてはそれぞれ所管がありまして専門職がいますが、なぜ企画課が対応しているかというと、平成15年に練馬区の助役、区長の下で副社長みたいなものですね、その助役をトップにするアスベスト等対策委員会を設置して、全庁でアスベスト対策に取り組んできています。現在も委員会は設置しています。今後の対策もそこで検討して総合的に進めていこうということです。
 その事務局が企画課になっていますので、今日ご報告にうかがったしだいです。お手元にご用意しました資料に基づいて説明させていただきます。アスベスト対策については、国も様々な形で取り組んできています。その国の動きに合わせて、区としても取り組んできましたが、非常に試行錯誤を繰り返して現在に至っています。
資料1(「練馬区におけるアスベスト問題への対応の経過」)
 資料1(「練馬区におけるアスベスト問題への対応の経過」)ですが、これは昭和50年に特化則で5%を超える石綿のころです。その中では誤りもありました。そういった経過もご説明申し上げます。
 資料1では、吹きつけが禁止になったというところからの区の対応について記しています。昭和62年に文科省の指導で、昭和50年以前に建設された学校について、吹きつけアスベスト使用状況の調査を実施し、除去工事をしてきました。このときは吹きつけロックウールと吹きつけバーミキュライトは対象外でした。石綿吹きつけのみが対象でした。
 その後、平成9年は国の平成7年頃の動きを受けて、ノンアスベストということで、区が建設する建物についてはノンアスベストという東京都の標準仕様書を準用して進めてきています。これ以降は、アスベスト建材は使用していないということです。

 このような中で、平成14年ですが、旧総合教育センターで吹きつけアスベストの使用が確認されて撤去されました。元は中学校だった建物を昭和53年から教育センターとして利用していました。この建物がある土地を病院用地にするので解体をするに先立って平成14年に調査し、判明したものです。ここについて区は平成15年に解体するまでそのままにしておく予定でしたが平成14年当時アスベスト根絶ネットワークの永倉氏(現・中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長)から、ご指摘をいただき、調査し撤去したという経緯があります。その際に永倉氏から区立の建物についての要望書をいただいています。
 このような動きを踏まえて、平成14年には、昭和56年までに建設された施設について調査を行いました。

 実は、昭和55年に石綿含有の吹きつけロックウールの使用が禁止になっています。国のマニュアル等によると、石綿含有ロックウールが使用されていたのは昭和55年頃までという記載がありました。それを踏まえて、1年余裕を見て、昭和56年までに建設された施設をすべて、区民施設も含めて調査しました。このときの調査対象として、吹きつけアスベスト、吹きつけロックウール、吹きつけバーミキュライトを対象としました。
 逆に言うと、この時点でもアスベストを含有する吹きつけ材、たとえばパーライト吹きつけなどは対象外でした。

 平成15年8月に、実は小学校、中学校にはエアコンが入っていませんで、夏の対策で天井に扇風機をつける工事をするに伴い、天井の吹きつけ材、先ほどパーライト吹きつけは対象にしなかったと申しましたが、吹きつけ材の成分分析をしたところ、アスベストを含有していました。これまで対象外としていたアスベスト含有吹きつけ材が判明したということです。
 この後、新聞などマスコミ報道されています三原台中学で、実は天井の配管の改修工事を行ったときに、吹きつけアスベストをはがしてしまったことが判明しました。工事の届出は受注者である工事業者の義務ですが、届出もしなかった。発注者である区の責任もある。これについてもネットワークの方々と現地調査の結果、判明しました。区としては一定の対策を行っていながら、調査から漏れたものからアスベストが判明し、また不適切な対応も判明したということです。

 このような経過を踏まえて、平成15年9月に、助役を委員長とし教育長を副委員長とするアスベスト等対策委員会を設置して、区としての対応について全庁的に検討を重ねてきたところです。その結果、15年10月に、「区立施設におけるアスベスト含有材の除去方針」を区長決定したところです。吹きつけアスベストだけでなく、含有吹きつけ材も除去対象として取り組んでいます。これに基づいて、15年度に除去する対象施設についての追加調査を実施しました。15年12月から16年4月にかけて、平成8年度までに建設された全ての区立施設の追加調査を行いました。これについては後にご説明します。区としての現時点でのアスベスト対策のもととなる調査を実施したということです。
 小・中学校全校103校、不特定多数の区民が利用する施設450施設について調査を行い、小・中学校においては約4割で使用が判明しました。区民施設は5%強でした。これら72施設については平成15年度から除去工事に入って、小・中学校についてはすでに昨年の夏休みまでに全部除去工事をやっています。区民施設については、今年度中に全て終了する予定です。
 これらを含めた対策は、「アスベスト対策大綱」を区長決定し、本日も資料をご用意しました。平成17年6月には、今年度に除去する施設についての粉塵濃度測定を行っているところです。このように試行錯誤しながら現在に至っているところです。

資料2(平成15年10月「区立施設におけるアスベスト含有材の除去方針」) 平成15年9月にアスベスト含有材の除去方針を定められました。資料2 (「区立施設におけるアスベスト含有材の除去方針」)の、「アスベスト含有材と区の対応」ということで表に整理しています。
 吹きつけアスベストは、石綿吹きつけ、岩綿吹きつけ、ひる石吹きつけです。アスベストを含有する吹きつけ材は、パーライト吹きつけや砂壁状吹きつけ等があります。これらは区の除去方針において、除去方針1として、学校は平成16年夏休み終了までに除去するということで、終了しています。区民施設については平成15~17年度に除去。除去方針3として、囲い込み等によって適切に管理されている、飛散する恐れのないアスベストについては、管理状態を常時観測しながら改修時などに成分分析調査を行ったうえで除去するという方針です。
 アスベストを含有する保温材は、通常は露出しておらず飛散の恐れはないため、改修時等に成分分析調査を行ったうえで除去するとしています。除去方針5として、アスベストを含む成型板等について、法令に基づき改修・改築にあわせて適切に処理するという方針です。

資料3(「練馬区アスベスト対策大綱」・PDF) 資料3(「練馬区アスベスト対策大綱」・PDF)は、平成16年5月に、これまでの取組みをまとめたものです。これまでの対応の経緯や学んだことを記載しています。その中で、リスクの考え方、「リスクマネージメント」「リスクコミュニケーション」という考え方が重要だと思っています。
 リスクコミュニケーションについては、正しい情報を区民に提供することが、区として非常に大事であると思っています。そのうえで区民からいただいた要望を受け止め、きちんと説明し対応することが非常に重要だと思います。

資料4(「アスベスト含有材の使用個所調査の概要」) 資料4(「アスベスト含有材の使用個所調査の概要」)は、アスベスト含有材の使用箇所調査の概要です。ホームページに掲載しているものです。平成14年12月から同15年7月までに実施した調査概要を示しています。このときには昭和56年以前に建設された建物が調査対象でした。これは吹きつけアスベストが使用されていたのは昭和55年までだということをふまえて、対象を吹きつけアスベスト3つに絞って行いました。
 平成15年度に除去工事を行うことになった施設について追加調査を行っています。区で定めた除去方針に基づいて、吹きつけアスベストに加え、パーライト等のアスベスト含有吹きつけ材も対象として追加調査を行いました。
 区の最終的対策は、平成8年までに建設された施設、これは竣工でなく着工ですが、を対象とした追加調査ということで行っています。平成7年度からアスベスト含有1%を超える吹きつけの原則禁止という特化則改正を踏まえたものです。平成9年度からは、区の仕様書にノンアスベストを盛り込み、平成8年度までに着工した施設について全数調査をし、その結果に基づいて除去工事を行っています。
 次のページに、使用箇所の一覧があります(資料5/「アスベスト含有材の使用個所一覧/学校施設」)。それぞれの学校について、どこにどのようなアスベストが使われていて、そこの粉塵濃度の測定結果はどうであったかを記しています。図面もホームページに掲載しています。次のページは区民施設ですが、含有1%未満の場合についても、全て除去するという対応を行っています(資料6/「アスベスト含有材の使用個所一覧/区民施設」)
          資料6(その他使用箇所一覧・学校施設) 資料7(その他使用箇所一覧・区民施設)

資料5(「除去計画のページ」) 資料7(「除去計画のページ」)は、区のアスベスト対策について平成17年度で、不特定多数の区民が利用する区立施設については終了しますということで、お知らせしています。調査結果、除去工事の計画、除去までのリスク管理について掲載しています。その他、健康相談についても掲載しています。工事費用も掲載しています。
 平成15年度から今年度までの除去工事に要する費用が15億を超えています。練馬区の場合は、一般会計の規模が2000億弱ですが、その中で15億は非常に大きい額です。保育園であれば2園くらい作れる額です。
 様々な行政ニーズがある中、優先順位をつけて区として行っていますが、トップの意向が非常に大きいと思います。錯誤を含めた経緯を区長として総合的に徹底的に除去するようにという判断があって、こういう取組みを進めてきました。
 練馬区としてもこれでアスベスト対策が全て終わったとは考えていません。様々な国の動きがあります。区民不安もあります。今後、さらなるアスベスト対策に取り組んでいかなくてはならないと思っています。参考になるか分かりませんが、練馬区の取り組みについてご報告させていただきました。以上です。

司会(名取):ありがとうございました。練馬区の取組みの先進性をはっきりさせるために、お手元の資料、国土交通省営繕部7月29日、文部省通達7月29日の資料2ページ目、厚生労働省通達8月1日1ページ、国土交通省7月14日通達2枚目を開けてください(資料/「各省庁の通達の違い」)各省庁の通達の違い
 順番に調査項目を見ると、国土交通省の7月29日は「吹きつけアスベスト・吹きつけロックウール」の30品目を調べなさいと言っています。
 厚労省は、「吹きつけ石綿、吹きつけロックウール、吹きつけひる石で、石綿(アスベスト)含有1%、折板裏打ちアスベスト」です。
 一番少ないのは国土交通省の民間建築物の7月14日で、調査項目は、「室内または屋外に露出してアスベストの吹きつけがなされている部分」です。
 文部科学省は、「吹きつけアスベストとロックウールとひる石」と3つ入っています。
 それと比べ練馬区は、「吹きつけアスベスト」と「アスベストを含有する吹きつけロックウール」、アスベスト含有する吹きつけ材として、「パーライト」、「ゾノライト」、「発泡けい酸ソーダ」、「砂壁状吹きつけ」、「有機質吹きつけ」、「石綿発泡体」と全部お調べになっています。さらにアスベストを含有する保温材も4種類入れている。そこの部分まで網羅していることに先進性があります。
 大越氏に補足していただきたいのですが、実際現場の自治体の建築や営繕部署で、一般的な自治体等の方で練馬区同様のチェックをできる人はどのくらいいらっしゃいますか?

大越氏:想像ですが、ほとんどの監督官庁の方自体がアスベストに対して認識度は薄いです。今度ある区から呼ばれて、40名ほどの区職員にアスベストとはどういうものか勉強させてくれ、自分たちが調査に対応できないと言われています。私はありがたくお手伝いさせていただくことにしましたが、たまたまその区だけがアスベストのことを勉強されていないとは思っていません。
 練馬区さんのようにいろいろ研究されている自治体もありますが、大半の場合は、その区のような実態ではないでしょうか。石綿の勉強をせずに、ただ上から言われたことをやっているのが実態ではないかと思います。
 吹きつけアスベストというものについて、吹きつけアスベストとロッククールばかりを主眼に言っていますが、行政側にも非常にバラツキがあって、労働安全衛生法の施行規則の中には吹きつけアスベスト、吹きつけロックウール、その他吹きつけバーミキュライト、吹きつけひる石等もアスベストと同類とみなすということになっています。ですが、行政もバラツキがあることは、今後もよく見定めていかねばならないと思います。

司会(名取):こういう点までかなり詳しい専門職は練馬区では何人くらいいますか?

琴尾氏:数字はもっていませんが、職種として建築職、環境監視、事務職が、ある意味連携して情報を共有してやっていることが大きいと思います。国や行政の資料など行政側の情報だけでは不十分です。はっきり言いまして、アスベストセンターや石綿対策全国連等がお持ちの情報も収集して、区としてここまでやるべきだろうという方向を出しています。

永倉氏:調査の始まった早い段階で練馬区の営繕課に呼ばれて、アスベストについてレクチャーをしました。その時、営繕課の若い方6名くらいが非常に熱心に話を聴いてくれました。多分その人達が中核になって、教育委員会施設課の課長をはじめとしたチームと、営繕課と教育委員会の連合チームという形で、それをまとめたのが助役を中心とした委員会という構造だと思います。

司会(名取):吹きつけ以外の、石綿含有建材について研修は何回位していますか? 

永倉氏:私が行ったのは1度だけです。他の研修があったと聞きますし、色々勉強されていったと思います。チームワークと、助役さんが座長について予算措置がいち早く決定できたという構造であったと思います。他の自治体でも参考になる体制作りだと思います。

司会(名取):石綿については、自治体の職員がまず何度か研修を受けないといけない。現状では、石綿の知識が少ないままで建物調査が行われていると思ってよろしいでしょうか。

琴尾氏:そうですね。

司会(名取):自治体で調査をされる方自体が、知識のないまま調査を実施しているということですね。本来研修をしてからでないといけないという問題がある。
 続いて、神奈川労災職業病センターの西田氏から、神奈川県、対策としては進んでいると思われている自治体ですが、そこで行ったアンケートの結果を報告していただきます。

西田氏:私はふだんは、労災職業病被災者の相談を受けて、認定補償につなげるという仕事に携わっています。この時期、非常に多くのアスベスト被害に関わる相談を受けていまして、対策まで手が回らない状態ですが、この間の行政が出す対策を見ると、深刻な被害実態を知った上で対策を出さなければ、対策事態がパフォーマンスに終わってしまうというような印象を持っています。
 私もこの1年前から、かつて自治体でいろんなアスベスト対策が行われてきたが実態はどうかということを調べようと思って準備してきました。7月1日から石綿障害予防規則が施行されるのに伴って、自治体のアスベスト対策を確立させる最後のチャンスと思い、とりあえず私どもの地域である神奈川県の38の市や町を対象に調査をしました。これは6月末のクボタ報道前の調査で、見てもらうと非常に面白いと思います。「公共施設におけるアスベスト使用状況についてのアンケート調査について」ということで報告します。

アンケート調査用紙 調査は、6月1日に発送して17日締め切りでしたが、約半分しか回収できなくて、その後電話でいれて、最終的に38のうち29自治体から回答をもらいました。
 アンケート調査用紙は資料の2枚目に入っています(資料/「アンケート調査用紙」)
 自治体の部署、担当者名も明記してもらうようにしました。3枚目に自治体の回答を公開していますが、非常に簡単な調査だったので、本来であればこれを基にもう一度聞き取り調査をしなければいけないと思っています。調査自体は不十分ですが、大体の特徴はつかめると思います(資料/「アンケート調査について」 および 「アンケート結果」)アンケート調査について

 まず、吹きつけ調査の見直しが必要かどうかですが、当時6月時点で「ある」と答えたのは1自治体しかありませんでした。いかに当時は無関心であったのか、今、こんな回答をするところはないと思います。
 2番目に、過去の吹きつけアスベストの調査について3つの時期に分けて聞きました。一番多かったのは1988年頃で、旧文部省がやった調査です。これが14です。ここで問題なのは、私のところにアンケートの回答用紙があるのですが、ここには確かに8つの町で「ない」と明確に答えています。電話で確認しましたが、マスコミ関係者にも手伝っていただいて、8つの町に確認しましたが、最初の回答を翻して、「やった」というところが増えて、現在のところ一応やったと回答が来ています。ですからここでは「0」としておきましたが、真偽は確認しようがありません。当時の資料が残っていないのですから。
アンケート結果
 そんな調査であったということは、やはり当時の調査はかなりいい加減なものであったと言えると思います。まじめに「分からない」と正直に答えているところも3つあります。実態はたぶんやったのかやらないのか分からないくらいの調査であったという直後の印象です。
 1997年頃というのは、労働安全衛生法が一部改正され、石綿の定義が5%以上から1%以上に変わった直後の時期で、1例あります。
 03年10月というのは、文科省の通知が出されたときです。過去の吹きつけアスベストが不十分だったということで、新たにひる石等もありますよと通知をした時期です。これを見て調査したところが2自治体です。
 その他は、川崎市の保育園でアスベストフェルト材が使われていたというような問題をきっかけにして調査した自治体が5つありました。それから学校以外の公共施設の調査ですが、やはり学校が先行していますがそれに伴ってその他の施設を調査したかどうかですが、残念ながら13で、調査していない、分からないというのが5つあります。

 問題はデータの保存です。保存していない、分からないというのが8もあるというのは問題です。アスベストの場合は20年30年たってから被害が出るのですから、過去のデータを保存していなければ、ばくろしたかどうかもわからなくなってしまうのですから重要だと思うのですが、残念ながらあまり保存されていないということです。
 それから大気汚染防止法の改正の必要について。
 現在の法は、残念ながら、吹きつけだけを対象にしています。練馬区のように石綿含有建材まで含めて対象にしなくてはいけない、石綿障害予防規則については、一応対象を含有建材まで広げていますから、法的整合性から言っても大気汚染防止法を改正しなくてはいけません。そのへんは、たぶん質問の意味が分からなかったのでしょう。
 「ある」が8、「ない」が3、「わからない」が18でした。一般市民相談はこの時期はあまりなかったのでしょう、「ある」が8で、「ない」が18でした。
 相談窓口も設けているところは、そんなにありませんでした。その窓口の部署も、まちづくり課や環境対策課、健康つくり課などまちまちでした。

 アスベスト対策についての条例や指針を定めているところは1例、これは横浜市です。横浜市は生活環境の保全等に関する条例で、1000平米以上の石綿含有建材の解体工事をやるところは届け出なさいということで、全国でここの自治体しかないと思います。もちろん東京都や兵庫県にも条例はありますが、ここまで決めているのは横浜市だけです。

 結果のコメントですが、やはりクボタ・アスベスト被害報道以前の行政の無関心さです。今と比べてほとんど関心がなかったことが分かります。過去の吹きつけ調査については、1988年頃をのぞいてほとんどやっていない。また、それすらやったかどうか分からない町が8つもあったことは驚きでした。
 それから、学校以外の公共施設をやっていない自治体があります。
 被害との関連で言うと、過去データを残していないことは問題です。今回の調査もちゃんと保存するようにと明記されていませんよね、国からいろいろ通知があって、国交省もやっていますが、記録の保存については何も触れていません。これは問題です。

 アンケートの結果を受けて、あらためて吹きつけアスベストの徹底調査と除去対策の必要を感じています。先行する自治体として練馬区の報告がありましたが、横浜市も2~3年前までは練馬区よりも進んでいたと思います。熱心な担当者がいたのです。その担当者がいなくなってからはやはりダメです。
 読売新聞に、横浜市は1%以下含めてアスベストを除去するという方針を出したと記事が出たのですが、これは全くの誤報でした。私の調べた限りでも、これから調査をやるというレベルです。ただ、以前は吹きつけだけでなく、フェルト材についても8施設で除去しています。やったことはやったのですが、現状は少しおかしくなっている。

 一つ、良い自治体の取組みとしては練馬区に続いて、神奈川では横須賀市がかなり進んでいると思っています。これは1年かけて私たちが要請した結果ですが、7月末段階で新聞報道もされていましたが、横浜市独自の新しいマニュアルを作ると公表されています。
 今盛んに各自治体が図面調査だけでなく現地調査、分析調査、特に分析依頼は殺到していて、分析費用も高騰しているという話もあります。そんななか気をつけねばならないのは、含有率の低い2%前後のものは分析機関によって「ある」と出たり、「ない」と出たりします。
 横須賀市の場合にそういう例があって、私どもが分析依頼した結果「ある」と出て、当局が分析依頼した結果「ない」とでました。ではもう一度やろうということでやったら、「ある」と出ました。含有率は2%でした。この間のマスコミ報道の追い風を受けて、横須賀市の場合は、72小中学校についてもう一度、分散染色法でやり直すと。以前は、X線回折はやったのですが、分散染色法はやっていなかったので。
 6月22日の通達では両方を併用するようになっていますが、当時はなかったのですが、もう一度やり直すことになりました。そういう意味でも、特に分析については、分散染色を併用するとコストもかかるので、ずさんな調査ですと省略することもあるので注意していただきたいと思います。
 横須賀市はやり直し調査をふまえて、横須賀市独自のマニュアルを作るということで、練馬に習って、吹きつけだけでなく含有建材についても対象にしています。

 ということで全体的に神奈川県はひどい状況ですが、やるところはやっています。それは我々がきちんと要求してチェックするということが大事だったと思います。行政任せにすると、熱心な方もおられますが、被害者についてあまりご存じない。きちんと被害状況を踏まえて今対策を立てることで、将来一人でもアスベスト被害者を救えるという重要な問題だということを言っていかないと、直らないと思います。
 過去の二の舞をしないためにも、私たちの動きが行政の対策を進めていく一つの大きな力になると思います。以上です。

司会(名取):1988年の文部省通達についても、やらない分からない自治体があった。当時の通達は吹きつけアスベストだけで、その後の2003年の通達で広げましたよね。それを実施した自治体も2つしかない。
 ということは今回まで多くの神奈川県の自治体は、1988年以降に学校の調査をしていないということですか。ちょっと衝撃的ですね。通達の有効性を含めて衝撃的な結果です。最後に2005年国の通達の問題点について、永倉さんお願いします。

永倉氏:アスベストセンター事務局長の永倉です。国の通達がバタバタと矢継ぎ早に出ています。
 お手元に資料があると思います。内容は、調査範囲が若干違いますが、ほぼ同じものを順次マニュアルで使っているということで、特に文部科学省が7月29日に発信した通達をモデルにお話します。

 2005年8月末の報道によると、各省庁は自分たちの過去の施策検証をして、ほぼ適切であったという回答を発表しているようです。これが本当にそうであるかは非常に疑問で、これからいろんな議論を呼ぶと思います。新聞報道を読む限り、厚労省も文科省も、環境庁の音頭とりが悪かったという言い方をしている。環境庁の責任にしようとしているようです。
 ただ、環境庁の責任と同時に、自分たちの縦割り行政の問題もあったという言い方もしていますが、これから一般のアスベスト被災者が出るうえで、国の責任が問われるということを射程に入れた報道であろうと思います。
 これらについては本当にそうであったのか。特に文科省については、88年に全国の学校のアスベスト調査を命じていますが、その内容は非常にずさんなものであったことが判明しています。それをきちんと検証する、当時の文部省の通達にどういう人達が絡んでいたのか、どういうふうな経過でそのずさんな通達が決定され全国に配布されたのかという経過をきちんと押さえていく必要があろうかと思います。

 同時に、昭和62年当時の学校のアスベストパニックと呼ばれる時期が終わってしまったら、結局あれで終わったという印象だけを残して、結局は策が講じられることはなかった。確かに一定の範囲で、各学校で吹きつけアスベストの除去は進みましたが、大きな部分が残され、それがアスベスト問題は終わったという印象と共に闇に葬られてしまったという経過が、今、私たちが直面している事態と同じではないかという危機感を持っています。
 ここ数ヶ月の騒ぎの中で、きちんとした対策を提案して、施策立法という形で残さないと、また、数年後、あのときでアスベスト問題は終わったという印象だけ残して、被災者が出続けるということにならないように、今いろいろな取り組みをする、国の施策や通達についてもきちんと見直して判断する必要があると思います。

 文科省の通達について気づいた点をざっと申し上げて、各地で取り組まれている人達の話を聞く時間を少し設けたいと思いますので、簡単な説明にしたいと思います。
使用実態調査要領
 文科省の通達「学校施設等における吹き付けアスベスト等使用実態調査要領」の中に、「2(1)調査対象建材等」があります(資料/「文部省通達 1/3」)。先ほど名取先生の話があったように、調査対象がいろいろ省庁でぶれがあり、 きちんとした調査対象が特定できるのかという問題点があります。

 もう一つの問題点は「2(2)調査対象建材の特定方法」で、設計図書等をみて建材名を特定しなさいということが言われていますが、大越先生がよくご存知のように、設計図書に書かれている建材と現場で施行されたものが違うことは良くあることです。
 そういう事情やどこがどう違うのかということを見る目を持った担当者はほぼいないだろうと思います。

 調査対象建材の特定という意味では、ここにはあげられていませんが、一つ重要なのは、その学校施設、一般の建物についてもそうですが、文科省に限っていいますと、学校施設を建築した業者のヒヤリング、つまりその人達が今いるかどうか分かりませんが、少なくともどういう建材を使用したのかを聞く努力は各教育委員会や学校がしていく必要があろうかと思います。リストアップのうえで非常に重要になると思います。

調査対象建材等
それから同資料の2ページに、「4.調査実施方法」の?B「吹きつけアスベスト等の損傷、劣化等による石綿等の粉塵の飛散により・・・」とあります(資料/「文部省通達 2/3」)
 これが非常に全国的にバラツキがあります。この吹きつけアスベストが損傷しているか、劣化しているか、現場を見る人によって大きな違いがあります。これは大きな問題です。

 最近、北海道小樽市のことが報道されていますが、小樽市の市民体育館の吹きつけアスベストですが、垂れ下がりやボロつきや落下や劣化が相当ひどいにもかかわらず、これは安全な施設だと言い切っています。
 その根拠は、施設を全く利用していない夜中に濃度測定を行って、外気と同等のアスベスト濃度しか出ていないということで、この施設はアスベスト粉塵は出ていないという結論に達し、使用を続けていました。
 今は小樽市民の活動で除去という方向に進んでいますが、それと同じようなことは多くの自治体で見られます。石綿の濃度測定を実施して、外気と同等だから安全だというのですが、窓を閉めて静穏時でなくて人が活動する条件で測定しないと本来はいけない訳です。
 報道機関の方に注意していただきたいのは、石綿濃度測定結果が大気と変わらないという場合に、測定条件を確認して頂きたいのです。
 小学校で石綿吹きつけのある普通教室の石綿濃度測定では、実際に子供たちが掃除したり、休み時間に暴れたときにアスベスト濃度を計らないと意味がないのです。又、大気汚染防止法の石綿工場の敷地境界の10f/Lは、石綿の環境基準ではないのです。ところがそれと比べて安全とする報道が多いのですが、やめて頂きたいと思います。

その他
 それから同資料の3ページ、「5.その他」で板状に固めたボードは対象から外すとなっています(資料/「文部省通達 3/3」)
 これは他の自治体にも同じような文言が入っています。確かに優先順位としては、吹きつけアスベストや保温材よりは後に来るというのは分かります。しかし学校を見て歩けば分かりますが、アスベスト入りのボードが足で蹴られて割られていたり、天井板がつつかれて割れていたりという箇所が山ほどあります。
 ですから少なくとも学校については、このボード類についても調査対象にすべきと思います。優先順位の問題としては、吹きつけアスベストが終わってからでも良いのかもしれませんが、少なくとも改修・解体工事をするときには、アスベストの事前調査が義務付けられています。
 改修・解体工事はいつか必ず行われるのですから、事前調査が前倒しになったという考え方で調査をすればよいだけで、別に保留する必要はないと思います。しかもボード類のどこに亀裂があって、どこに劣化があるかをいち早く知ることができる。それに伴って対策を取ることも十分出来ることを考えれば、調査対象から外すという話にはならないと考えます。
 アスベスト問題が盛り上がりを見せている中で、是非、文科省としては取り組むべき課題だと思っています。

 自治体では、練馬区が非常にモデル的な取組みをしていて、すばらしい調査結果を示しています。先ほど申し上げたように、自治体の体制作りという意味で、非常に示唆を含んでいる。つまり助役さんが委員会の座長なので予算的措置が手早く措置されるということがあります。いろいろな自治体の営繕課や教育委員会が頑張って調査をして、その結果、報告を上げても予算面で先送りされるという話はよくあります。予算が伴うような体制づくりは重要なことだと思います。
 それと私どものところに、ある保育園の、たぶん園長先生でしょうが女性の方から電話があって、文部科学省から最近いろいろ通達が来て、園でアスベストが使われている廊下面積とかいろいろ何平米か調べろと言われたのですが、全くどうやってよいか分からないし、誰に頼んでよいかも分からない。自治体に聞くと、自分でやってくださいといわれ、途方にくれているという話がいくつかきています。
 文科省は通知を一方的に出しただけで、現場では混乱しているのが実態です。これは教育委員会や行政の窓口が一緒になって出来るような体制を各自治体がとらないと、学校に通達だけが行って11月15日までに結果だけ上げろというのは非常に無責任な文科省の姿勢だと考えます。
 これについては、まさに練馬区で示しているように、リスクコミュニケーションという形を取って、行政や当該の自治体、利害関係者、保護者の方たちが話し合いを進めた上で、どういった調査が必要で、どういった優先順位で除去していくべきか、そんな議論を進めた上で11月15日というような非常に切迫した、慌てて調査しなさいなどというようなことは言わずに、ここは腰をすえてじっくりとやるべきだろうと思っています。

 通達で気づいた点は以上ですが、もう一つ重要な点は、廃棄物のことが全く触れられていない。アスベスト廃棄物は非常に大きな問題として先送りされています。私たちも環境庁などに話に行ったりしていますが、アスベスト入りのボード類も解体現場では非常に飛散性の高いもの、下からバールでつついて落とすようなものが実態として山ほどあります。そういう廃棄物をどういうふうにどこに処理するのか、このルールが全くできていません。
 環境庁が廃棄物の法律をガイドラインで示しましたが、このガイドラインも非常におおまかであいまいです。その点については、こちらでもこれから検討し省庁に言っていく必要があると思います。
 今の流れの中で、ここ1~2ヶ月の間に、私たちが10年以上取り組んできたものを慌てて作って、慌てて何らかの結論を得ようとしている。1987年当時のアスベストパニックの二の舞、つまり、大騒ぎしたが実態としては多くを残してしまったということがないように、これからじっくりと腰を据えたリスクコミュニケーションが必要になってくると思います。

司会(名取):国の通達のずれですね。一番顕著なのが、国土交通省内部の営繕部7月29日通達と、同じく住宅建築指導課7月14日通達の違いです。
 国土交通省の営繕部は一生懸命対策をされてきた所で、後ろにフローチャートがありますが、昭和63年まで吹きつけは危ないと明示しています。
 対象についても、国家機関の建物は営繕部ですから、こういうふうにやりなさいと書いてあって、さらに調査項目についても露出している部分以外で天井内の隠蔽されたアスベストについても気になる時は報告しなさいと言っています。
 同じ国土交通省でも、民間建築物については、最初は昭和31年から55年が対象です。しかも1000平米、室内または屋外に露出して1000平米以上ということです。建物の設計図書等で天井内の隠蔽部分を見なさいとも書いていない。同じ省でありながら、年度や、チェックする場所と方法が、国家機関向けのものと民間建物は違うというずれがあります。
 文部省について言うと、学校施設等における吹きつけアスベスト等使用実態調査の調査対象建材の特定方法をみると、「現地で目視により確認する」とか、「点検口がなく壁または天井を一部撤去する必要があるなど目視による確認が困難なものはこの限りではない」と、そうでなければ目視をちゃんとしなさいよと、今回はこの点においては一歩踏み込んで書いている。出ているところだけを見るなら、当然改築の際、天井の上にある吹きつけ石綿は落ちますからね。省庁間のバラツキがかなり目立っています。
 では、大阪で学校等について取り組んでいるA先生から補足をお願いします。

A氏:この中で教員の方は手をあげてくださいませんか? おられませんね。
 3点お話したいです。
 一つは、文科省調査のいい加減さです。2つ目は測定方法の問題で、一番大事だと思います。3つ目に、教師や生徒は一体何しているのだという問題です。

 最初に文科省調査のいい加減さです。1980年代大阪府立校で見つかったのは20校、その後に発見されたのが26校。ですから前回の捕捉率は46分の20、しかも後の26校の中に、高校の普通教室の天井などがたくさんありますので、本当に低い捕捉率です。これについての謝罪が全然ありません。これから文科省が何をするにしても、まずお詫びしてから始めるべきだと思います。交渉するなら頭を下げさせなくてはいけない。
 僕はこの中で、14年間吹きつけ石綿の中で働いてきたので、胸膜肥厚が今後でないか正直言って不安です。そういうお金も出してもらいたい。そこから話は始まるべきだと思います。これが一つです。

 2つ目の測定方法ですが、大阪府では天井裏に10校見つかっていますが、ここは安全だといっています。根拠は、去年10月、日曜日の昼間に測定して検出されなかったこと。
 私たちの学校では、それは絶対におかしい。普段の学校で生徒が帰った後にすぐに測定しなさいと、1年間言い続けていますが、絶対にこれに応じません。あなたの学校だけそういうわけにいかないとかいろんな口実で、まともな測定方法に応じません。
 私が前の学校で自主的に測定したら、普通の状態で1リットルあたり1.5本でした。掃除直後は3.6本になっています。今はエアコンがありますから、締め切ってエアコンを動かしている状態で、上で和太鼓をたたいたり、学校はすごい振動騒音状態です。そこで測定しなくては意味がないと思います。測定のいい加減さの問題をはっきりさせないと、いけない。絶対にこれが問題です。

 3つ目は、教師の関心が非常に低いのです。学校は今、非民主的で管理が強化されていて、モノが言えないところになりつつあります。他面では次の世代の人達を教育するところです。
 僕は行政がやることも大事だと思いますが、教師全体で石綿を安全点検で学期に1度やるとか、生徒にアスベスト問題を教えるプログラムを作るとか、教師の中で研修するとか、直接学校で説明会を開かせるとか、学校の中でのこの問題を話す事をしていかなくてはいけないと思います。

司会(名取):石綿の濃度測定は、吹きつけの部屋があり、濃度測定をしたが一般大気と違わないので安全です、と? 実は石綿濃度測定を、飛散の少ない状況で実施していたという意味ですか?

A氏:はい。

司会(名取):では、どういうふうにちゃんとしなければいけないと思いますか?

A氏:私たちが学校の安全衛生委員会で出しているのは、和太鼓部が練習している下の教室とか、掃除をした直後、エアコンを7時間動かして授業して生徒を出してすぐ、会議室で会議をやって皆が動かしている真下の部屋、生徒がいっぱいたむろしている昼休みのロビー、天井板が破れている、ボコボコが数10箇所あるのですが、その破れている部屋の測定です。

司会(名取):これは大事な指摘です。吹きつけアスベストが問題だというと、石綿濃度を測りましょうと言って、日曜日に窓を全部開け放って測定して、大気と同じでしたから安心ですと報告を出される所が本当に多いのです。具合の悪そうな所で測定しない。そういう条件下で測らないで、安全宣言を出す自治体が極めて多い。そういう問題点を言ってくださったと思います。

永倉氏:日本の学校の特性だと思いますが、柔道部や剣道部の部屋の天井に、吹きつけアスベストがあるケースがよくあります。高校や大学の話ですが、受身をとるたび、吹きつけアスベストを見ているのですが大丈夫ですかと大学生から連絡があったりしています。世界的にも学校の先生の中皮腫が発見されて、フランスでもそうですが、そこからアスベスト禁止に向かうということが報告されています。日本でも今後あるのではないかという恐れを持っています。これから十分に対策を取らないと大変なことになるだろうと思っています。

司会(名取):世界的にも教員の中皮腫の死者が出ていますし、おそらく日本でも出ているだろう、顕在化していないだけだと思います。
 では、会場の方からご質問やご意見をうかがいます。

B氏:質問させていただきます。私は技術診断で配管調査をやったり、建築の施行管理をやっているものです。配管診断の際に保温材を撤去する作業があって、私も今まで知識がなかったものですから無造作にカッターで保温材をはがしていました。固形物の中ですが、実際にカッターでカットする際には粉塵が出ます。
 それと最近、グラスウールの保温材が出ています。グラスウールとロックウールとアスベストの違いは何ですか? もう一つは、点検口をあけて中をのぞくと、長年にわたり点検口にたまっていたものがバサッと落ちてきて、何度も埃をかぶっています。これについて何か良い案はないでしょうか。

大越氏:アスベストとロックウールとグラスウールの違いについて、専門家ではありませんが、今まで私が勉強した中でお話させていただきます。
 端的に言うと、アスベストは天然の鉱物繊維。グラスウールやロックウールは人造の鉱物繊維です。アスベストは破砕すればするほど細かくなって0.数ミクロンまで落ちる。ロックウールやグラスウールは製造過程において、そこまで細くはできません。0.3ミクロンくらいまでです。そこが根本的に違うと思います。医学的にどう反映するかは分かりませんが。
 今でもグラスウールやロックウールが使われているという問題で、平成4年時点で、当時の労働省から、グラスウール、ロックウールの取り扱いについての指導指針という通達が出ています。つまり、防塵マスクや保護具の着用とか粉塵飛散抑制処置とかですね。そのへんを十分に留意されて施行されるのがよろしいのではないかと思います。かつ、配管に使われている保温材にアスベストがあった場合には、特殊な処理、できるだけ飛散を抑制する処置方法があるので、専門家と相談されるとよろしいかと思います。

C氏:先ほど、アスベスト含有建材の含有率の測定の値段が高騰しているという話がありました。厚労省が出している8月1日資料の最後にある分析機関全部に電話をしたところ、全く同じ条件での測定をお願いしたのですが、6万円から30万円という見積もりをだされたところまでありました。その違いも分からないし、高い方が良い精度で出るのかというのも分からないのですが、適正価格はどのくらいですか?

司会(名取):石綿含有建材全般に殺到しているのではなく、吹きつけ石綿について殺到しているという話だと思いますが、どうでしょう?

大越氏:言葉が適切でないかもしれませんが、便乗値上げではないかも知れません。
 もともと分析機関は多くないところへもってきて、一気に流れ込んでしまったためタイトになって、聞くところによると社員も24時間体制でやられていると聞いています。30万円というのは初めて聞きましたが、10万円というのは聞いております。ただ、在来、6月中旬までの一般的な相場としては、私どもの場合は3万円、これが公表のところではないかと思っています。

司会(名取):今までは数年間3万円前後でした。今年は測定方法が変わりましたから、リーズナブルなところでも6万円にあげた。更に忙しいのでもう少し価格を上げたところもある。それ以上の価格は、これを機にちょっと利益をというところでございましょうか?

D氏:解体の零細企業の問題です。民間アパートの解体業者を取材しましたが、作業員6人くらいでやっていて、マスクも集塵装置も全くやっていません。吹きつけ石綿ではないのですが、一般の石綿建材の可能性のあるところです。解体で請け負った費用が150万くらいで、産業廃棄物として引き取ってもらうのに6割くらい持っていかれるので、実際にマスクをしたり、身の安全を守るためにかける金がないと言われました。
 既に吸入しているから今更言われてもしようがないみたいな、あきらめの状況でした。石綿則とか法律や規則は、労働者の安全を守っていくために何が構造的に必要か、というような。国による経済的なものとか、施主に対する罰則とかをお聞きしたい。

司会(名取):防塵マスクは(一人3000円前後ですから)十分可能ですね。大越氏、いかがですか。

大越氏:今度の石綿側においては、その辺を若干カバーできているのではないか。8条、9条、10条というのは、建物所有者に対する責務、つまりアスベスト処理費用や工期を遵守しなくてはいけないとなっています。それが今後多少社会に反映されるかと思います。
 それともう1点、廃棄物の処分ですが、これだけアスベストが騒がれると、この2~3年後には処分場がなくなると思います、たぶん。皆様が非常に危険に思われているので、処分場がこれ以上新しく生まれる要素はありません。ですから早い時期に、国が、少なからず処分関係に関して何らかのバックアップをしないと、大変なことになる。せっかくきちんとした撤去を行っても、埋め立て処分場がなくなる危険性があるので、それが第一義だと思っています。

琴尾氏:行政の立場から申し上げますと、大気汚染防止法の話が先ほどありました。
 東京都の場合、環境確保条例というのがあって、大気汚染防止法を上回る規制をかけています。ただ、届出義務があってきちんと義務化されているのは吹きつけアスベストと保温材です。屋根材、壁材、床材などアスベストを含有する成型板については、条例で義務化されていません。石綿則でも規制をどうかけていくかが大きな問題だと思っています。
 もう一つ、私たち自治体は区立施設としては一定程度の取組みをしはうですが、遵守義務があって手作業ではがしなさいとか、手作業できない場合は水をかけながら飛散しないようにしなさいとか、遵守義務はありますが、届出義務や罰則はありません。これが今後、非常に問題かと思います。小さい一般住宅にも使われていますので、これに対する規制をどうかけていくかが大きな問題だと思っています。
 民間施設について、今後どういう対応をするかが非常に問題です。民間施設の中にも、個人住宅あり、保育園や福祉施設や私立幼稚園があり、子供も含め住民の方が日々利用しています。これらを全て施設責任者の自己責任で調べるのはムリがあると思います。これらに対する一定の適切な支援策を設ける必要があると思っています。これらについて全て自治体の責任で、自治体の経費だけで行うことは非常に難しいと思っています。やはり国として一定の制度を設けて、国としての予算をかけて行うことが必要であると考えています。
 それから、やはり適切な正しい情報をいかに住民に提供するかが非常に大事です。報道機関の方も多いので失礼ですが、マスコミ報道等で不安が広がっていますが、飛散する恐れがある場合と飛散する恐れのない危険度の違いが十分住民には伝わっていません。自治体としては、基礎的情報の提供をきめ細かくやっていく必要があると思っています。

西田氏:業者が、コストが安いとかで十分な安全対策が取れない場合は、石綿則第9条の発注者の配慮義務というところで触れられているので、これを根拠にして業者側が発注者に、「責任が問題になりますよ」としなくてはいけないと思います。
 逆に、発注者側にとっては、ずさんな工事をさせないために除去業者の選定の基準みたいなものを作る必要があると思います。アスベスト処理業者については、国の告示で技術資格制度を作って、そこに登録されている業者が、たとえば環境省のマニュアルには載っていました。そういうことを国や行政がきちんとすべきだと思います。

永倉氏:石綿障害予防規則であれば労働基準監署の所管ですから、自治体の環境対策課みたいなところ(建築部署でも良いですが)に今後権限をもたせて、強制力を持って罰則規定を適用していくのがひとつあると思います。
 不動産関係について、アスベストがきちんと処理されていない建物について、今後どのような不動産取引上問題があるかということを不動産関係者が心配し始めています。今後、土壌汚染の問題が一時大きくなったのと一緒で、きちんとアスベスト処理がされたかどうかが取引上の問題になり得るということが十分に考えられると思います。
 解体するときにお金をかけないという意識が非常に高いのですが、将来、子供たちに遺恨を残さないためにも十分にお金をかけてキチンと処理するという意識を促すような施策が要求されると思います。

E氏:環境省がアスベストを1500度の高温で焼却処理するという報道がされていましたが、それについてはどうですか?

大越氏:アスベストの処分は最終の埋め立て処分、これはきちんとした許可のある特別管理産業廃棄物処分場、ないしは中間処理場、中間処理というのはコンクリート固化と溶融に分かれています。コンクリート固化は固形化するだけのことで、それからまた埋め立て処分に回るので、抜かさせていただきました。
 今は溶融という方法が廃棄物処理の中では定義付けられています。アスベストの沸点が1167度です。ですから1500度ですと、アスベスト特有の繊維性がなくなってガラス状になってしまう。ということから、溶融することにより無害化し、かつアスベストが30分の1に減量される理想的な処分です。私もできるだけそういう処分場が開発されることを期待しています。あいにく非常に設立コスト、処分コストが高くなるということで、まだ一般化しておりません。一部では、あります。

F氏:そもそも練馬区が真剣に取り組まれたきっかけは何ですか?

琴尾氏:先ほど資料の中で、経過の中でご説明したことにつきますが、昭和62年頃から国の通達に基づいて一定適切に対応してきました。ただその中で、国の通達に基づく調査対象外からアスベストが出てきたことが判明した。これについて、アスベストセンターの方からご指摘いただきました。そういうことを区として受け止めて、全庁的に取り組んできたということです。

司会(名取):最後に、シンポジストの方々にまとめのご意見をいただきます。国の調査が11月にかけて出てきます。ざっとどのくらい調査漏れが出そうかが一つ。こうならないためには、今後どういうものが必要か、私たちは何をすればよいのか、一人ずつお話をいただきたいと思います。

大越氏:先ほども申し上げましたとおり、仮に国からの報告がまとまったとしても、その信頼性は70%くらいしかないのではないかと思っています。これからどのようにしたら良いかという事では、行政監督官庁がもう少し意識レベルを高めていただかなくてはいけないと思います。パフォーマンス的な一時的なもので終わっているような気がしてならないので、そのへんをもう一度お願いしたいと思います。

琴尾氏:同じ行政の立場なので、国の批判をするようなことは申し上げにくいですが、先ほどからご指摘がありますように、各省庁で建築年次など調査対象が違う、対象品目も異なるなどバラバラです。
 国交省も昭和55年までの建物ということですが、後の通達で平成元年までと期間を延ばしています。厚労省は、公立の建物だけでなく、社会福祉施設は民間もありますので、それも含めての調査依頼を都道府県に出しています。これについては、東京都では民間の建物についての依頼が市町村にはまだ来ていません。そこまで広げると、アスベストが出た場合はどうするのかという問題があるので、まだ東京都段階で検討を進めていると思います。
 そういう意味で今回の調査がバラバラですのでどの程度捕捉できるかということを私どもは申し上げられません。
 ただ住民に一番身近な自治体としては、国の動きも見ながら区としての統一的な対応をしなくてはいけないと考えています。区長からも早急に対策をまとめろという指示も出ていますので、区としての対応の方向をまとめて区民にお示ししたいと考えています。

西田氏:重要なことは、自治体で調査についても対策についてもバラツキがあると言えることだ思いますが、これをどこが調整するかということです。
 私は、自治体が頑張らなくてはいけないと思います。イギリスの例で、自治体間を調整する自治体協議会みたいのがあって、財政問題を含めた統一的要求を国にしています。やはりこういうことを自治体がやるべきです。全国知事会が総務省に対して、この問題について何点か要求していますが、自治体の財源、地方自治という観点からは自治体のバラツキがないように調整をやるような統一的機関を作る必要がある。知事会ができなければ全国市町村会がありますが、そこがやるのかどうかわかりませんが、この時期にそういうものを作る必要があると思います。それをやらなければちゃんとした対策が出来ないということははっきりしているわけですから。それをこの時期に是非やるべきだと思います。

永倉氏:公共施設のアスベストについて言うと、一つの大きなポイントは、地震のときに避難民が避難する体育館にアスベストがあったらどうするという問題があります。
 仙台の地震でも最近建てられたプールの天井板が下に落ちていましたが、中越地震でも中学校の体育館で封じ込めしていた吹きつけアスベストが飛散し、体育館が避難所として使用できませんでした。
 早急に公共施設から吹きつけアスベストを無くす事を各自治体が自覚していただきたい。今は各自治体がバラバラに独自の判断で除去などをやっているわけですが、練馬区の取組みなどを十分に参考にして、腰を据えた施策が必要であろうと思います。その際リスクコミュニケーションみたいな形で、住民や利用者、自治体、NGO、NPOが十分に話し合って、何をどう除去していくかということを決めるという手法が正しいと思います。
 それと、もうひとつ重要な観点で、アスベスト入りのモルタルということが言われていますが、これについては非常に認識も除去も難しいということで、まだ触れるに至らない、非常にダークな部分があります。何らかの基準を作って対策を早急に取らないと粉塵が防げないと思います。

司会(名取):今回の調査は年内に結果が出ますが、もう一度調査員を研修してから、再度来年以降調査をやりなおして頂くしかないですね、不十分ですからしようがないです。もう一度調査をやってくださいと言うしかないと思います。
 この件で非常に良く分かったのは、行政の縦割りが今なお全然解消されていないということです。これではアスベスト対策が上手くいくわけがない。今後しなければいけないのは、内閣府にアスベスト対策の専門家を置くしかないでしょう。内閣府の総合的担当者が、石綿の全施策について継続的に対策の調整を行う。各省庁の人を呼び、通達も調整してから出す。そういうシステムを作らないと、いつまでたっても多省庁にわたるアスベスト問題は解決しません。
 今アスベスト新法を作る話が出ていますが、そこに盛り込んでいくしかない。この通達で良いのか、今日のシンポジストにパブリックコメントをかければ直っていたわけです。今後それが石綿の対策に必要なわけです。
 内閣府におかれた専門家と我々NPOの定期的な会議による石綿の施策が、今後の日本の石綿対策に是非必要です。
 では、これでシンポジウムを終わります。ご清聴ありがとうございました。